予測は可能である |
2006/01/30 ライブドア |
今回のことでメディアからの取材が相次ぎ、慧眼・・・・とほめられます。どうやって予測したのか?と。
海外から見ているライブドア事件
「会社は誰のものか」好評発売中 (新潮新書)
会社は鵺か蝙蝠か
長文で恐縮ですが去年の二月に書いた文章の一節を紹介します。(これはほぼそのまま五月に出版された本に書きました)
「会社経営者のほとんどは、厳しく長い選考過程のなかで、能力のみならず、倫理性まで問われているわけですが、それでも経営者の犯罪は昔も今もあとをたちません。経営者の倫理が保たれているかどうかは、司法を中心とした国家の介入がなければ担保されない部分でもあるのです。それは会社が瀬戸際になるまでめったに生じないことであり、経営者の無責任の浸潤は、日常的に避けられない部分であります。だから近代企業は経営に対するさまざまなチェックシステム(監査役、社外取締役、株主権限)を定めているのです・・・・・
・・・経営者と株主。このどちらかが責任をもってくれると、企業もまともでいられるのですが、この両者が無責任だと、企業には責任の空白地帯=「モラルハザード」が生じます。そして、この無責任状態は非常によく起こりがちなのです。なぜなら株主が無責任だと経営者は、自らが責任を持つ動機を失います。一方、無責任な経営者が放置されている場合、その事実自身がすでに「株主の無責任」を意味します。ということは片方に責任感がないと、とたんに双方が、そして企業全体が無責任になるのです・・・・・・自由主義・市場主義の立場からは、神の見えざる手によって倫理性がない企業が淘汰され自然に倫理性のある企業だけだ生き残る、完全競争の世界を想像したいところです。しかし近代会社は、神の選択を恐れなくなるほどに、企業悪が強大化することがわかってきました。例えばアメリカにおける鉄道事業の独占化であるとか、環境汚染の企業史。あるいは最近のエンロン事件とアーサーアンダーセンの消滅など、エリートが犯す極端なモラル・ハザードの例を考えてみてもわかります。したがってこれを規制するために国家や司法の強力な介入が必要になるわけですが、規制の必要性に対する自由主義者のチャンピオン=アダム・スミスの嫌悪感もむべなるかな、というところでしょう・・・・・
・・・・今日本企業が直面している大問題は、どちらかといえば、比重は1)経営者の無責任です。戦後に始まった株の持ち合いで「株主」が見えなかったことに安住して、株主利益を重視べき経営者の倫理=忠実義務が揺らいだ。これが現在企業買収を敢行する諸投資会社、堀江さん、村上さんなどの立場であり、それはある程度正鵠を得ていると思います。
しかし振りかえって、もう一方の「株主責任」というものはどうなるのか。現在よりもはるかに株主権利が大事にされていた大正から昭和にかけての株式会社21社の破綻について「高橋亀吉」という市井の著名経済学者が分析をしている資料によれば、それらの理由は。
1)役員の不正 2)事業の無謀拡張と蛸配 3)放漫経営と蛸配 4)投資対象の失敗と蛸配 5)放漫経営による銀行破綻 6)大風呂敷経営 となっております。(この蛸配というのは、蛸が自らの足を食べる例に見習って、長期で経営されるべき株式会社を短期にて食い尽くす行為をさしています。)
基本的には「株主の専横から蛸配当を強いられ、それを隠蔽すべく欺瞞的・バブル的な経営が行われ、かくて事業を破綻に導いた」ケースがほとんどとなっています。」
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さて未来は予知はできませんが、予測は可能です。それは理論の力によるものです。
正しい理論さえマスターすれば誰でもある程度予測が可能になります。
幸運の女神の後ろ髪をつかむ方法
たとえば宗教社会学の達人,泰斗である小室直樹先生は、ソ連の崩壊を予言いたしました。
現代の預言者 小室直樹の学問と思想―ソ連崩壊はかく導かれた
私の現代社会観察に関する「教義」があります。
現代社会を観察する上で重要な視点は次の3つである。
1)個人組織革命。ITメディアの進展で個人と社会組織との紐帯は大きく変化した。インディビジュアル&チームということで私は「IT革命」と語呂を合わせています。
この時代の神は「メール」です。メールサーバーを見られたら、それが最期の審判です(家庭でも・・・・・・・)かつてのように会社自体が密室として犯罪の温床となるのではなく、ヒューザー事件や今回がそうですが、経営者と外部専門家を交えた組織犯罪の様相を呈するのが当たり前になってくることでしょう。
2)ブランド。 伝統や因習が遠くなり社会や組織と個人との紐帯が薄くなれば、より「ブランド」という「自発的な帰属意識」が致命的に大事になってまいります。ブランドの時代が到来したのです。日本ではこの傾向は極端です。海外一流ブランドの日本市場の売り上げシェアは、軒並み30%-40%に達しています。
世界の中で日本と中国がブランドマニアとして知られていますが、この二カ国とも、世界価値観調査では「宗教心が少ない」「現世の幸福感に大きく欠ける」という特徴が出ています。
3)宗教社会学 宗教は人々の「生活様式」(暮らしぶり・習慣)を決めるもの。日本人は織田信長の比叡山の焼き討ちなど非宗教化改革以降、長いこと宗教から遠ざかっておりますので宗教の大切さが今一わかっていません。(その後仏教は世俗化して、冠婚葬祭産業の一部になり、高僧は出現しなくなりました)
現代は(といいますか江戸中期以降のことですが)消費や経済、そしてコミュニケーションそれ自体を「宗教化」して生活様式を決めているのが、私たち日本人です。私たちは一見非宗教化した、その実ある種強烈な生活様式の元でくらしています。
快楽殺人の多い国少ない国
この3つの視点で、現代社会を見抜くことが可能とある日急に直感して私は20年間勤めた電通を(そのか細い確信のみにささえられて)退社し独立いたしました。
http://www.nozomu.net/profile/bro-j.html
その後この教義を詳しく解説する本も出しました。
ブランド、ブランドⅡ
この方法論で非宗教化したはずの日本社会を見ると。基本的に3つの宗教に分かれます。
1)世間教
いわば付和雷同教とか、喉元過ぎれば教、アンチ反省教、です。
同じ人間が言っているのとは思えないほど、過去と意見が変わりますが、本人はその言動の変遷に気がついていません。そこには「常に大勢にしたがっているだけだ、何が悪い」という一貫性があるのみです。
たとえば、尊皇攘夷のときにどうやって尊皇開国に意見が変わったのか。それを説明した文章はありません。
また第二次世界大戦終戦時に、反米から親米にかわったこと。
この内心の屈折を克明に記録した文章は極めて少ないです。
テレビメディアがこの宗派の教祖と言えるでしょう・・・・・・
2)大組織教
これは日教組とか、住友銀行とか、トヨタとか、東大とか、財務省とかいろいろあります。多くは社会エリートが帰依します。
そうした組織は長いこと社会に根を下ろしていますから、基本的には社会への適合性が高く危険度が少ないといえます。
しかしその組織がまともな場合、信者もある程度真っ当ですが、競争に直面しない組織の多くはやがて組織がおかしくなり、その成員の精神がおかしくなってまいります。日本の場合武家のイエ社会が原型なので、生産と競争(戦争)の両面の社会性がないと、こうした組織の健全な維持は難しいと思います。
新聞メディア人種はこっち系です。
3)新興宗教
これはクローズドな価値観、あるいは上記二つに属することができなかった、あるいはそれをよしとしなかった人が時としてはまる価値観です。
ネットにより、世間教や大組織教からあぶれる人が増える現代。
大企業教は、終身雇用制度と年功序列があってこそ生涯の安定を供給することが可能であり、「面倒みるかわりに死ぬほど働いてほしい」という、ギブアンドテイクの教義を提供してきたのですが、小社会化でそれが難しくなっている。そうした状勢もあり、この系統が多くなっていると思います。
この系統の場合、その新興宗教の教義、様式(社会体制との妥協性)により、社会にとっての危険度が大きく異なります。
多くの新興宗教はその経済的な存続自体が難しく大規模拡大を行いません。
世俗と信仰を分ける教義の場合、危険度は少ないといえます。
(これはキリスト教が次第にマイルド化してローマの国教になったことをみてもわかる)
出家宗教は、信者の社会・財政基盤を危うくするため、より危険度が高まります。
世俗と信仰の教義が重なる場合(イスラム教がそうですが)既存社会組織にとって危険度が大きいといえるでしょう。
信仰が世俗を凌駕する。信仰により世俗を変えるという教義の場合、革命思想が生まれ、より危険になる可能性が高くなります。
さて。(これまでの)ライブドアはこの中での、明らかに新興宗教系でした。そして堀江氏のニヒルなヒールぶりに率いられた教義(株価・時価総額がすべて。お金が儲かるならグレーゾーンでもかまわない。最終的にはお金が儲かるなら脱法してもかまわない)の危険度は、普通のベンチャーと比べて比較にならないほど、高かったのです。
どうして脱法にいたったかというと、株式総額が常に爆発的に上がっている事実自体が教義の正統性をしめしているので(旧ソ連共産党の正統性が経済発展に成功しているという事実にのみ立脚していたのと同様)、脱法を犯しても株価を維持する経営を志向せざるを得なかったのです。
現代を個人組織(IT)革命の自体であると考え、その目標をブランドに、その理論を宗教社会学に求める視点で日本社会を解読すると、実にさまざまな予測が可能になってきます。
PostCommnet
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Comment
批判的なことを書いた一般レビュアーの実名を公開するなど、違法行為スレスレの子供じみた対応で、その後起きた多くの人からの批判すら予測できなかった吉田さんが、ライブドアの違法行為を咎め、さらにそれを予測できるというご意見に、正直びっくりしました。
でも、完膚なきまでに一般レビュアーに人として敗北しても、何事もなかったようにモノが書けるようになってよかったですね。復活おめでとうございます。ライブドア事件さまさまですね!
私は予言が成就すると信じていたので、それを書いた本を「読まないままで批評」されたくはなかったのです。いずれにせよ、子供じみていたことはおっしゃるとおりで、反省しています。
知らない方へのご参考までw
http://www.nozomu.net/journal/000162.php
新潮45新年号(12月19日売り)執筆 ネット炎上記対応ポータル
mizuhoさん
まず、自分のことは予測できないものです(笑)
できてたらものすごい金持ちになれるじゃないですか。
次に。ご参考まで。
グレーゾーンに挑むエリートへの忠告
http://www.nozomu.net/journal/000090.php
「言ってほしくないだろあの話・・・」とさりげなく来たときに、「これですか、どうぞどうぞ」と自分から晒し「でなにかいいたいんですか?皆さんの前で言ってくださいな」と畳み掛けたりすれば、恥はかいたりするものの、危険はないんです。
「読まないままで批評」されたとか、また客観的な根拠のない言い訳をして、結局自分自身のした謝罪の価値を下げちゃってますね。
事実と意見をわける。謝ったらそれ以降言い訳はしない。
そんな基本的なモラルを守らずその年まで生きてこられたのであれば、幸せな人生でしたね。
また消されるのかな、これ。
loveboldさま。
コメントは他者を誹謗するようなものでない限り削除しません。
炎上のエントリ見てください(W
愛憎は紙一重と考えております。
多分前回は投稿しそこねたんじゃないんですか?
訂正・明らかにスパムと思われるコメント、トラックバックは気がついたときに削除させていただいております>loveboldさま
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