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アナログ放送停止で発生する大量の地デジ難民

2007/02/19
メディア社会

 この項詳しい数字の確認がとれるごとに書き換えさせていただきます。

 現在日本にあるテレビ受像機の台数は、1億2000万台。約5000万世帯が約2.5台保有している計算になります。
 2007年度1月の時点で、家庭に出回った地上デジタル放送受信機数は、約1,030万台。
今後20型以上のテレビはほぼ100%地上デジタル放送対応になるでしょうから、今後数年間約600-700万台程度が今後地上デジタル対応になってもおかしくありません。したがって、テレビ受像機という点からみれば、2011年の段階で、約5000万台がデジタルに対応していることでしょう。
つまり確かに。家庭にある大型の主テレビの大多数は、ハード的には地デジ対応になるといってもいいでしょう。これ以外に、地デジ受信機付きDVDが1000万台ほどでますからそれによる対応も一部可能となるでしょう。

1) 大量の「地デジ見ていたはずなのに」難民・・・・自分のせいなのに?暴動化

しかし私のまわりで(私の大叔母がそうなのですが)、地デジテレビを買ってきただけで、地デジ放送を見ているつもりになっている人が多いのです。(彼女ももう地デジを見ていると言い張っています)販売店の説明にも問題があるようです。戸建ての場合、地デジ放送塔向けにUHFアンテナを立てて、テレビと接続すれば自動的にチャンネル設定がされるはずですが、それをしておらず、アナログ地上波をそのまま見ているわけです。UHFアンテナの最近の受注件数からみて、多くの人々がこの状態にいるようです。この人たちがどれぐらいいるかわかりませんが(調査をしても本人が気づいていないのでわからない)、彼らは2011年停波、そのXデーのときに、愕然とはじめてその事実に気がつくと思います。大量の、数百万か悪くすると数千万単位での地デジ難民がここで発生すると思います。彼らにあらかじめ注意を支払わせるために、アナログテレビでばんばん「地デジ対応テレビでまだこのCMを見ている人、このままだと2011年からテレビが見られなくなりますよ」と喚起を促すべきでしょう。(既存のテレビ視聴者にははなはだ不愉快でしょうが・・・)あるいは地デジで毎日1000万円あたる宝くじを放映して、「このくじ見ていない人はやばいですよー」と声をかけるのはどうでしょうか?5年で200億円ぐらいの宣伝費に相当するわけですが・・・
(しかし彼らは戸建ての場合、時間さえかければ基本的に救済可能です。数万円のコストで電気工事屋さんにきてUHFアンテナを新しく取り付けるか、方向を変えてもらえばいいのです。今のUHFアンテナが使えるかどうか、素人には判定不可能と思いますが、この3年以内につけたものなら対応している可能性が高いそうです。)

2)大量の「個室副テレビ地デジ」難民・・・・若者は黙ってネットに移行

今家庭にあるテレビは大型の主テレビ1、に対して個室にあるテレビが1.5台以上あるわけです。個室テレビの多くは20型以下で、これはデジタルに対応していない安価なものが多いのです。ビデオリサーチはその数値を公開していないと思いますが、主テレビと副テレビ(を総計したもの)の視聴率は副総計のほうが高いことは、私の昔の記憶をたどれば間違いありません。(もしこの点について詳しい方がいらしたら数値をあげて訂正を願いたいと存じます。)この日本全国の副テレビの台数分まで地上デジタルに対応する、というのは産業的に不可能だと思います。また家計的にも難しいことでしょう。ですから、アナログ波停止というのは基本的に一家に一台、お茶の間団欒の世界を、テレビ創世記の40年前に戻って再現する、という話になることでしょう。

今クライアントの多くは個人視聴率(特に若者視聴)を求めています。若者の視聴率が高いフジテレビの広告収入は他局よりも割高です。その嗜好を差し引いたとしても、もし副テレビを見ている若者を中心とする個人がテレビ視聴をやめてしまえば・・・・民放テレビ局の収入は視聴率に直結していますから、収入は半減してしまう、ということになりかねません。(ビデオリサーチは民放、広告会社の出資で成り立っていますから、そのあたり主テレビだけを測定する、というような絡め手で対応する可能性もなくはないわけですが・・)
もちろん、副テレビを地デジ対応にする努力を惜しまない家庭も多いでしょうし、DVDレコーダーで対応する、あるいはワンセグでアナログよりも悪い画質でも見ようという人もでてくるでしょうから(基本的にワンセグは数インチ画面を対象とする商品特性です)、完全に半減ということではないと思いますが・・・・・特に若い世帯はもうテレビを見ない、ネットでかまわない、この際そんな負担を強いるテレビは見捨てよう、というかYOU TUBEで十分、ということになるのではないか、と思います。こうした物言わぬ若き生活者が数千万いるわけですが、彼らを失うことは産業の未来の多くを失うことでもあります。
(もう一言踏み込んで発言すれば、2011年以降のテレビ視聴のメインがワンセグパソコン経由になってくる、というプラスシナリオもありえると思います、まさに全生テレビのYOU TUBE化がおきるという)


3) 「山間・僻地の本当の地デジ」難民・・・・もはや表彰モノ

さらに本当の地デジ難民になる資格があるのは、人口の約2%程度残ると想定される山間地・僻地などの地デジの非到達地域の住民です。彼らは他の難民と比べて純正すぎます。彼らにはなんの努力の術も、勘違いの余地もありません。

4) 「長屋・アパート等で発生する都市型地デジ」難民・・・公明党の支持母体消滅?

それ以外に大問題となるのは、全国にある小規模の共同アンテナがある長屋、古いアパート、マンションなどです。彼らは個室でアンテナが立てられない場合が多く、共同受信設備にテレビ視聴を頼っています。今たまたま東日本エリアのデータがあるのですが、東日本のエリア世帯数2535万に対して、ケーブルテレビ世帯数はその半数、1296万世帯あります。この中で地デジにまったく問題なく対応できる多チャンネル型のCATV世帯は293万世帯です。この残りの約900万世帯のうち、パススルーという方式を採用しているところはそのまま地デジが見えますが少数です。そうでないところは、配線を取り替えないと地デジが見えないので、数百万世帯は、配線自体の引き換えが必要なのです。こうした古い共聴アンテナを入れているようなところ、ブースターをかましているようなところでは、高齢者が多く管理組合も不備で、新しくアンテナを建てたり、屋内配線を引き換えたりする合意をとることが非常に難しいであろうことは、想像に難くありません。彼らはかわいそうに地デジ対応テレビを買っていたとしても、「長屋・アパート等で発生する」×「地デジ見ていたはずなのに」難民になってしまうのです。

最近こんな記事がありました。

「政府与党は最近、高齢者や政府・与党はテレビの地上波がデジタル放送に全面移行するのをにらみ、低所得の 高齢者世帯などへの受信機の無料配布を検討する。2011年7月に現行のアナログ放送が打ち切られると地デジに未対応のテレビは映らなくなるため、買い替えが困難な世帯に対する支援策が必要だと判断した。
 外部取り付け型の受信機は2万円弱から市販され、簡易型なら1台数千円程度で 調達可能とみている。配布は地方自治体が担い、国が財政支援する。新たな交付金のほか、地方債発行を認めて元利償還費用を交付税で賄う案を軸に調整。自治体の負担は 1割程度に抑える見通しだ。
 http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20070217AT3S1602Q17022007.html

しかし長屋に住む高齢者にぽんと、外部取り付け型の受信機を渡して、高齢者がテレビを見られるものでしょうか。誰かが長屋の屋根にUHFアンテナ(例えば首都圏ならば墨田新タワーに向いていないといけない)を立てて、そして長屋の屋内配線を入れ変えてあげないと、見られないのではないでしょうか。(ちなみに、墨田新タワーの完成は2011年、アナログ停止の直前です。)そのための取り付け費用は一世帯あたり、少なくとも数万円以上にのぼることを覚悟したほうがいいのではないでしょうか。

さらにNHKは、こうした状態で「我が家にはデジタルテレビはない」「我が家ではデジタルテレビが見られない」と言い張る人々(事実少なくとも全国で1000万世帯程度そういう世帯が出ると思いますが、それ以外にアナログテレビが見えなくなった状態に怒り心頭で、受信料の支払いを忌避したいと考える人々が、たくさん生まれるはずです)に対してどうやって集金を行っていくのでしょうか。パラボラ探索で徴収が可能だった衛星放送と違い、戸外からデジタルテレビかアナログテレビかを集金人が見分けるのは、至難のはずです。
そう。もちろん地デジNHK波にスクランブルをかけて有料テレビ(民間企業)を目指す、あるいは、税金を投入して国営放送になる、というまったく真逆の方法論はあるのですが・・・・・


津波、地震、台風など災害時にもっとも大切な生活インフラとなるのが、地上テレビです。
2012年にそうした災害が運悪く訪れたら、その社会的な災厄は大変なものがあることでしょう
そしてここにあげた地デジ難民は、テレビをもっとも大切な生活の楽しみにしている人も多いことでしょう。
このブログを読むような人のことは私は心配していません。
(あなたがたもそして私も、どうにかするでしょう。あるいはテレビなしでも生きられることでしょう)
しかしこうした問題に気がつかないで2011年を迎える人々、
現状の地上テレビの最大のファン達が難民となることを心配しています。
自らの存亡、破滅するかどうかの瀬戸際にあるはずのテレビ事業者自体、監督官庁が、こうした問題への解決策をお考えならば、是非お聞きしたいと存じます。

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地デジ難民になりたくない人々へのご参考

シニア層は要注意!これからが本番「地デジ詐欺」にだまされるな!

最近の「地デジ詐欺」の手口、その傾向と対策

えっ、エリア内でも映らない? “住宅タイプ”を知らずして快適地デジ生活はあらず!

これがなくては始まらない……地デジ受信に最適な「アンテナ」を探せ!

“フルコース”でいくら?実録・戸建て“地デジ”アンテナ導入記【見積もり編3】

アンテナの見積もり依頼時に知っておくと便利な屋根の形状

今度は【集合住宅編】、地デジアンテナ設置はまずベランダを考えよう!

CATV方式はパススルー対応とパススルー非対応がある
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過去意見集

異色対談 吉田望meets平井卓也 いま敢えて問う『地上デジタル凍結!』

4月6日発売 週刊ダイアモンド掲載 「地上放送のデジタル計画は即刻凍結して見直しを」

BOD -Business Oriented Digitalization- 『放送政策の転換点』

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