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新日露同盟

2006/10/03
歴史と社会

日本にとっての目下の外交上の死活問題は、北朝鮮です。
アメリカ、中国、ロシアにとって最大の関心事は核拡散を防ぐこと。
彼らがもっとも防ぎたいのは、日本の核武装だと思います。
そして大規模な衝突が起きたり、あるいは、統一後の韓国が核武装をすることになったりしたら、日米同盟があろうとも核拡散は防ぎようがありません。日本もある程度あいまいに、そのことを暗示しておくべきだと思います。
現在韓国とアメリカの同盟上の距離が開きつつあり、統一後の韓国の核武装に対する意思は不明確です。2年前の韓国の国民調査では核武装に賛成という国民が半数を超えていた、という資料もあるからです。そしてドイツの例でわかるように、統一は必然的に経済的・民主主義的な意味での後退(および軍事的威信の増大欲求)を招くことでしょう。
北朝鮮の核拡散を防ぐための会議が六カ国会議であり、そのメンバーは、日本、米国、韓国、中国、ロシア、北朝鮮です。この会議は2005年2月には北朝鮮が核兵器保有を公式宣言し、協議の無期延期を発表したために中断しています。

この状況でこのメンバーを見ると簡単にわかることですが、ロシアを味方につけることは極めて重要です。ロシアがどの国につくかで、もし六カ国会議の意思決定が多数決ならば、その帰趨が決められてしまいます。この国のなかでもちろん日本と米国の民主主義度は圧倒的に高く、韓国、ロシア、中国、北朝鮮の順です。しかし、もし朝鮮半島の統一が起きれば、その余波により上記理由で、韓国とロシアの順は逆転してしまうと思います。
ロシアも中国も北朝鮮に面しており、北朝鮮で生じる動乱の地政学的な影響を大きく受けます。そしてロシアが望んでいることは、安全保障の枠組みにおいてアメリカの独壇場にならず、自国の政治的な地位を確立することだと思います。資金余裕のある日本はその意味でロシアのいいパートナーになれる可能性があります。(そしてロシアと親しくすることは中国に対しても、韓国に対しても強いけん制になるはずです。)すくなくともそのニュアンスをかもし出すべきでしょう。

この数年の日露関係において極めて残念だったことは、鈴木宗夫衆議院議員の失職と、それに関連した佐藤優前外務省職員の休職です。外務省(ロシア閥)と彼らの死闘が繰り広げられ、対ロシア外交はほぼ中断してしまいました(ように外部からは思われます)。ロシアはきっとある種浪花節の世界。そうした個人的な人間関係が非合理なまでに世界観を決めてしまう人たちのように思います。そして小泉さんは、別に政治姿勢として反露的であったことはないと思いますが、これらの政治的な出来事と外務省の無能ぶりが、ロシアに間違ったメッセージを伝えてしまっていたのだと思います。そして日本外交全体が上記のシチュエーションに対して無神経すぎたように思います。

と思っていたところ、最近2つ、日露関係の改善を連想させる記事が出ました。
「3島返還」大々的報道 北方領土で露有力視

これは勇気ある発言でした。
すでに実効支配を60年以上続けているところで、そして自国民がいない領土に対して、軍事的な力もない国が全面的な返還を求めるというのは現実的な政治姿勢ではありません。日本にとって北方領土の最大の問題は、日本漁船の拿捕を防ぐことではないでしょうか。先日の北海道根室沖カニ漁船銃撃・拿捕(だほ)事件には、地元のヤミ利権や、ロシア密漁船、カニ密漁市場におけるロシアンマフィアの存在を感じました。その無法は両国にとって不幸な事態といえるのではないでしょうか。領土問題から最大の利益を得ているのは無法者のはずです。
漁船拿捕事件 破られた安全の“密約”

密漁問題の解決には二島返還では無理ですが、三島返還で十分なはずです。ニクソンーキッシンジャーが米中対話を実現したように、安倍首相―麻生外務大臣が相対的に右翼的出自であるということは、逆に日露関係における譲歩を行っても国内から刺される心配がさほどない(彼らが譲歩したのなら仕方がない)という意味で彼らがこの分野で大きな活躍ができるフリーハンドを作り出しているのかもしれません。右翼の主要な関心は中国と韓国に向かっており、敵の敵は味方というわけです。

ロシア艦艇、舞鶴初入港  4隻が6日に海自と救難訓練

日露の軍関係者は交流を持ち信頼関係の醸成を行うことは極めて重要と思います。ソ連崩壊から10年余、世界の武器市場でロシア製の武器が氾濫したことは、各国(たとえば中国)とロシア軍部との関係を生じさせるのに、十分な背景となりました。しかしその関係はそれぞれの軍事戦略が異なり、さらに自国での軍事ノウハウ蓄積(たとえば中国)が行われてしまえば、長続きするとも思えません。

さてこれらには、鈴木宗夫衆議院議員の復権や佐藤優前外務省職員の活躍が関係しているのでしょうか。今度機会があったら佐藤さんにインタビューして、このブログで紹介してみたいと思います。すくなくとも鈴木議員が佐藤さんの言われる国策捜査と逮捕後に、このように復権したという民主的な政治状況は、ロシアが日本を面白い国、と思う理由のひとつにはなっているような気がします。

ご参考:佐藤優
自壊する帝国
国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

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