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慈善団体の説明責任

2007/03/05
メディア社会

会社は誰のものなのか」を書くときにヒルズ族のことを書くために佐々木俊尚さん(ジャーナリスト)には大変にお世話になりました。彼は個人ジャーナリストとしてあいかわらず、いい仕事をしています。
彼の最近の記事を引用します。これはネット君臨という匿名者によるネット批判(今回はトリオジャパンという慈善団体に対するネット上の批判)に対する毎日新聞の記事に対して、取材を受けた佐々木さんが逆取材を試みたものです。
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毎日新聞「ネット君臨」取材班にインタビューした

――しかし内部告発においても、告発する側は正義だと信じ、しかし告発される側は「匿名による誹謗中傷だ」と受け止めるようなこともケースが起きてきますね。線引きをするのは難しいのではないですか。どこで線引きするのでしょう。
池田氏 検証するんです。
――誰が検証するんですか?
池田氏 それを佐々木さんにお答えするわけですか?
―― お願いします。
池田氏 それは控えさせてください。批判が正当な内容なのかどうかについて、われわれは裏付けをした上で取材を進めています。
――たとえば今回の「さくらちゃん」問題における、トリオジャパンの不透明な会計についても裏付けを取られたのでしょうか。
池田氏 その裏付け取材は行い、資料も入手しました。その結果として(ネット君臨の)記事になったのです。
――トリオジャパンの会計が公正なものであるという裏付けを取られたのであれば、それは「さくらちゃん」問題で批判されている両親に対する強力な支援となる内容だと思うのですが、なぜ記事化されなかったのですか。
池田氏 (記事化しないという)そういう判断をしたということです。
(文中の池田氏は毎日新聞社側の取材責任者)
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この記事のこの部分を読んだときになにか強烈な違和感が残りましたが、それはその場ではわかりませんでした。
それがその後の小倉秀夫弁護士のブログを読んだりコメントを書いたりしている間に次第にその「違和感」の正体が明らかになってきました。
それは日本の慈善団体の多く(この場合トリオジャパン)は「会計の説明責任」を果たしていない、ということです。
当たり前すぎたでしょうか。
ウィキペディアの説明責任を読むと・・・
「政府・企業・団体などの社会に影響力を及ぼす組織で権限を行使する者が、株主や従業員といった直接的関係を持つものだけでなく、消費者、取引業者、銀行、地域住民など、間接的関わりをも持つ全ての人・組織(ステークホルダー:stakeholder、利害関係者)にその活動や権限行使の予定、内容、結果等の報告をする必要があるとする考えをいう。」
営利企業も特に株主に対して会計や経理の説明責任がありますが、慈善団体の場合寄付者や被寄付者と、団体との力関係は、その団体が力を持てば持つほど、一方的になってきます。影響力や権限が通常の商取引よりも強くなりえる独占性が生じるために、特にこの説明責任が重要になってきます。(もう一言言い添えると、したがっていい活動を慈善団体が行うためには、ある程度の給料所得を保証して有名企業に働くような優秀な人材を集める必要があります。透明性は必要ですが、清貧である必要は必ずしもないといえましょう)

もし社会的な影響力のある慈善団体が会計の透明性について、公に説明責任を果たすつもりならば、それはこのような形で新聞記者に対してだけ明らかにするものではなくて、まず寄付者に対して、そして次に賛同者を含む全てのステークホルダーに対して明らかにしなければなりません。それはしたがって当然のことですがネット上で簡単に手に入る資料でなければいけません。それが説明責任であり透明性ということだと思います。
もしコストが心配ならば・・・引退した弁護士や会計士を活用してそれこそ慈善活動に参画するために無料で監査をしてくれる人たちは、沢山いると僕は思います。トリオジャパンは連続した沢山の募金活動に関係し、社会的な影響力が大きいわけですから、毎回の募金活動の収支決算とデポジット額、固定的な年間活動経費などを明らかにすべきと思います。

そこに(今回はトリオジャパンですが)不誠実があるかどうかを第三者が立証する責任がある以前に、そこに不誠実がないことを慈善団体自らが明らかにすべき事柄と思います。
新聞記者だけが納得する、しかも記事化されない「説明責任」というものは世の中にありえないのです。

「なぜ記事化されなかったのですか。」
「そういう判断をしたということです。」
新聞社や新聞記者は自ら記事の内容・プロセスについての「説明責任」を果たす必要はない。佐々木さんの果敢なる逆取材全体から立ち上ってくる雰囲気はこれだったと思います。
このやり取りの奥底にある「ダブル」の違和感の正体はこれだったのです。

私が知る限りいまだに公にならない上記慈善団体の会計の透明性について、その資料が本当にその説明責任を果たしうるものだったのかどうか(であれば・・・・すでに公になっているべきはずのこと)、取材側の判断が問われます。説明責任に関して専門家(この場合慈善団体と新聞社双方)のスタンスや立ち位置が問われるところです。
多分佐々木さんと僕は同じ意見を持っているのではないかと思います。
相変わらずいい仕事しているな、と心から拍手を送ります。

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