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「気分一致」 第七回:感覚を名付ける

2003/08/24
人生・本そのほか
日本語パワーアップサイト ATOK.com
メールマガジン 『日本語のチカラ』 連載
「気分一致」 第七回 2003/6/17




 私の事務所ではブランドを作るという仕事を生業としています。ところで、日常よく使う言葉ですが、ブランドとは何でしょうか。私の定義は次の通りです。

 ブランド=「ある言葉の呼び覚ます様々なイメージの連なり」。

 例えばベンツであれば「信頼、安全、ドイツ」、ソニーであれば「先端、いいデザイン、AV」。イメージが言葉の周辺にブドウの房のように連想によって結びついています。そして、強いブランドの条件は、人々に連想させるイメージが多様であること、そして多くの人々が同じイメージを連想させることの二つです。

 ちょうど今取りかかっている仕事にビールの新商品開発があります。ビールは、実際には味覚の物理的な差を作ることが難しい商品で、商品名やパッケージを隠した調査をすると、ビールの銘柄をあてられる人というのはごく少数であることがわかります。
 一方、現実には私たちの多くが「この銘柄のビールはおいしい」と指名買いをするのです。それはなぜかというと、実際の味覚とは別に、言葉やコマーシャルの醸し出す映像、あるいはパッケージの印象が産み出す味覚のイメージ、いわば「疑似味覚」があるからなのだと思います。

 ビールに関して味覚を表現する言葉には「淡麗」、「豊穣」、「辛口」といった日本語があります。これらは本来、日本酒の好ましい特徴を表現するために使われてきた言葉達です。ビールの本格感を訴えるため、最近ではこうした伝統的な表現をビールにも援用するようになったのだと思います。日本語ではお酒の味覚を表現する言葉は、色彩や季節を表現する語彙の豊かさにくらべると、あまり多彩とは言えません。そんな中で「ドライ」はカタカナを利用して新しい疑似味覚を表現した成功例といえるでしょう。

 ところでこの仕事を通じて私はちょっと哲学的な疑問を抱くようになりました。私たちは言葉を見つけ出してはじめて、感覚を感覚と認識するのだろうか…。言葉を産み出すことにより新しい感覚が生まれるのだろうか…。私の直感的な答えは「イエス」です。私たちの日本語が、過去ずーっとそうであったように、新しい感覚を表現する造語能力を今後も持ち続けてほしいと思うのです。

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