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「気分一致」 第二回:人を斬る。花が散る。コトバ、言の刃、鬼の牙。

2003/08/24
人生・本そのほか
日本語パワーアップサイト ATOK.com
メールマガジン 『日本語のチカラ』 連載
「気分一致」 第二回 2003/3/18




 日本語は50余りのカタカナとひらがな、そして膨大な漢字のおかげで、外国人にとって世界で最も習熟が難しい言語の一つ、と言われているそうです。

 例えば江戸時代後期。識字率は男性で60%程度とそれなりに高かったものの、日本語を自在に操ることができたのは、武士や僧侶、裕福な町人や庄屋などの特権階級に限られていました。そこで活躍したのが庶民に代わって手紙や書類を作る「代書屋」です。

 落語に、「儲かった日も代書屋の同じ顔」というフレーズがあります。確かに人の訴状をたくさん書いて儲けた代書屋さんがニコニコしていたら、仕事をお願いする人々は面白くないでしょう。人のプライバシーを知ることができ、喜怒哀楽の人情の機微にふれる代書屋さんには、それなりのつっけんどんさが求められたのですね。

 そういえば、プリンセスGOLDという漫画雑誌に「代書屋佐永」(山下友美著)という話がかつて載っていました。復刊ランキングの上位にある名作です。

 「時は文化文政、所は江戸の雑司ヶ谷界隈。手習いの師匠に佐永という青年がいました。彼は読み書きができない人に代わって文や書簡を認め、はては副業として書画の贋作までやってのける、名うての代書屋でもありました。しかしこの佐永は(じゃーん!)、筆で人が斬れる、謎の力を持っていたのです…」(復刊ドットコム「代書屋佐永」あらすじより)。

 今回のメールタイトルはこのコミックのコピーなのですが、日本語の切れ味と華やかさを表していて見事だと思います。

 代書屋は公文書を書くだけでなく、訴訟書や嘆願書、はては恋文や紹介状などの代書を行い、市井の人々の生活にとってなくてはならない支えとなっていたそうです。

 運転免許やパスポートの書き換えのときに書類の作成を請け負う「行政書士」という職種がありますが、実は彼等の前身がこの「代書屋」なのです。

 大脳と文字がより直結したメールの代書は…今時誰にも頼めません。世に放たれては消えてゆく皆さんのメールに、軽やかな論理と色彩感覚を是非いかしてください。

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