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書評:リクルートという奇跡

2002/09/16
人生・本そのほか
僕の知り合いに藤原和博さんという方がいます。
彼はリクルート出身のキラ星のごとくいる有名社員の中でも最も有名なお一人です。
(さだまさしさんにそっくりなことでも有名です)
彼はもう何冊も本を出版されていますが、最近「リクルートの奇跡」という本を文芸春秋から出版しました。今日その本を読みました。
漠然と感じていたリクルートマンシップのメカニズムが、まさにこの著書で明らかにされ、定理化された後世に残る名著です。

衝撃を受けました。
冒頭は藤原さんが昨年の株主総会で現社長に「いつ辞めるんですか?」と聞くシーンから始まっています。その場面を想像するだに、この僕でも凍りつきます・・・
僕は、彼が株主総会でただ一人の質問者であったことにも驚きました。
彼にこの本を書かせた理由は公憤だと思います。義憤、いやリクルート憤といってもいいかもしれません。
それは、現経営者がリクルートマンシップを消尽して利益のみを追求している事に対する怒りです。この嘆きは私の周りに数多くいるリクルート退職者からも聞こえてきます。リクルートがいつかは消耗されつくされる非人間的なマシンとなりつつあることに対する、心からの拒絶がこの本には示されています。
最終章で彼は再び現社長に質問をしています。いつお辞めになるのですかと・・・
そして現社長が会社の寮を入札で購入し、別荘を購入したことを暴露しています。
そしてそれ以外の法に抵触する行為(といっても時効になっているでしょうが)と今後の告発を匂わせています。
これはある種の文芸テロルです。(出版社は文芸春秋ですが)
返り討ちを覚悟しながら白刃を抜いた。昔でいえば果し合いのようなものです。

今読後の衝撃をまとめることができないままに書いているのですが・・・・
経営は一方、統治者間の政治でもあります。
リクルートの最大の株主は社員持株会です。株主総会にはダイエーの中内さん、江副さん、そして東京電力他の株主もいるはずです。そして取締役たちがいます。
(藤原発言では下を向いていたことでしょう)
日本において役員人事権を持つ社長の権力は強いものですが、しかし力あるリーダーがいて社内外の人望をまとめれば三越のケースでもありましたが、打っちゃることも可能です。
しかし、それには政治が必要です。
藤原さんはその政治を選ばなかった、つまり江副さんや中内さんやまわりの取締役に話をしてもダメだ、と思ったということでしょう。(だいたい江副さんや中内さんのようなには公私混同はとりたてた問題ではないことでしょう(笑))
この本は正論で貫かれています。しかし株主総会や取締役会という密室では抜き身の正義は好まれません。だから言論というパブリックな場で、その株主総会や取締役会自体を裁こうじゃないか。正論の延長線上で、藤原さんはそういう心理になったのだと思います。

この藤原さんの言論に対する後世の評価はどうなるでしょうか。
一つには、ここまで書いたからには、この先の経営者交代までの責任、その筋道立てと根回しまでも全力でしてほしい、するべきだ、とも感じます。このテロルはテロルとしてもう一つ上の政治を実現してほしいと思います。
ここまで暴露されても、黙殺が続き、もしそのままずーと現在の政権が続いたら、それこそ、リクルートマンシップは完全に消滅してしまうことでしょう。
つまり藤原さんは、この本を書いたことで、そして明らかなる正論を言ったために、より大きな政治的な決着の責任をも引き受けてしまったのではないか。それでも公立中学の先生になって嘆いているだけとしたら、それは無責任ではないか、という気もするのです。
一方でこのテロルは、現在の政治上の登場人物に返り血を浴びせるものであるだけに、彼が発揮できる政治力にも目下さらに限定が生じたようにも思います。
藤原さんはスターであるだけに、内外からの嫉妬とも無縁ではないことでしょう。
このあたりがまことに難しいです。これは割り切れる問題ではありません。

僕のとりあえずの結論は、
正論と政治、テロルと正義、義憤と野心、文武両道、全部あり。
間違いも長い正解の一部。改革の時期にはこれぐらいの心持で行こうじゃありませんか。

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