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インターネットで人間は賢くなったか?

2001/03/20
歴史と社会

よくインターネットで情報が格段に増えたという人がいます。
本当にそうでしょうか?
ケネス・アローというノーベル経済学者が「組織の限界」という含蓄の深い本を書いています。
彼はこういうことを言っています。
「情報というのは感覚器官を通じて頭にはいらなければならないが、頭脳と感覚の容量はいずれも限られている。情報はファイルに蓄積できるかもしれない。しかしそれは意志決定の際にふたたび検索されなければならない。」

インターネットに最初につながった人は、誰しも自分の頭脳が拡大したような気がします。
大脳のメモリの代わりにブックマークが役割をはたしてくれたような気がするからです。
しかしそれもブックマークが一覧画面でみえる範囲に整理されている時代だけ。
そのあとは「なんだっけなー、なんかいい情報どっかでみたんだけどなー」となって元の木阿弥です。

彼の言葉を続けます。
「様々なシグナルを区別できるようになるためには時間や努力を十分に投資しておくことが必要である」
全く新しい情報、というものはそれだけでは役にたたないのです。古いなじみのある知識のどれと近くてどう違うのか。その関係がついて評価をされて、はじめて新しい情報は雑音以外の意味を持つのです。
ビットバレーで開業した20歳代の多くのベンチャー経営者にはこの種のハンディキャップがあったのです。当初彼らは人脈のネットワークがあり、新しいITベンチャーを起こす上で必要な人材や技術、ノウハウとファイナンスを紹介することが可能でした。それはまったく新しいビジネスを創出する不安定さを解消する上で、技術的にも、精神的にも、彼らを強化するメカニズムであったはずです。
例えていうと彼らの優位さは普通の人には見えない、相互ブックマークにありました。
しかし、その「ブックマーク」はすぐにいっぱいになり、また多くの人びと、あるいは遅れてやってきたリアル企業が自分達でブックマークを始めると、ビットバレーにはさしたる競争優位はなかった、ということだと思います。
その次のステージではむしろ、彼らの人生経験の乏しさ、ビジネス環境の激変ーとりわけ「バブル」体験のなさ、組織には文化が必要だという自覚のなさ、大企業との連携スキルのなさなどが、阻害要因になったはずです。新しい情報を解釈し評価して、自分の頭脳を変えていく柔軟性—まぁ知性といってもいいでしょうがーを彼らから失わせた、といえるでしょう。

インターネットは確かに情報の爆発的な増大をもたらしました。
しかしそれは逆に情報を知性にかえるまでの時間や努力、失敗と成功の経験のハードルを爆発的にあげているとしたら・・・・単に知るということと、理解するということの間に、非常に大きなハードルが登場しているのではないでしょうか。
老人の意見を聞きましょう。それも年老いて革新的な老人を探しだし礼をつくして。
彼の脳は新しい様々なシグナルは容易に入らないかもしれないが、それを区別し解釈する知恵が沢山詰まっているはずです。
きっと彼は若き日には保守的な人間であったことでしょう・・・・

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