表記文字のアナログ文化か、表意文字のデジタル文化か |
1998/07/01 メディア社会 |
これは電子ブックについてのちょっぴりシニカルな意見です。というかシニカルな気分のときに書いたんでしょう。結局何をいいたいんだか・・・今読むとわからない原稿です。
最近、日米両方で話題となっている未来商品に「電子ブック」がある。
これは、液晶画面がついたA4サイズ程度の薄型端末で、むかしからよく「未来の本」などといって取り上げられてきた、出版業界にとっての永遠の「夢」である。とはいってもこの夢は過去の試みが、その度失敗に終わってきた経緯がある。「全てのメディアは自殺未遂する」という有名なことわざがあるが、技術や制度が発想に追いついて諸条件が完備したときに、初めてその商品が幅広く市場にはばたく事になる。(例えばNTTのキャプテンが目ろんだ電子情報サービスは、その約10年後、思いもかけないインターネットの出現によって始めて可能になったのである。)
この電子ブックでは、恐らく次の3つ、1)端末のサイズと価格(パッケージング) 2)画面の解像度(ピクセル数や濃度・色度) 3)ソフト流通(参加出版社・出版点数)が、マーケットが立ち上がるかどうかを決める条件になるであろう。この3つの条件が組み合わさり、消費者の合点が行くサービスが登場したときに初めて、電子ブック市場が立ち上がることになるだろう。なかでも画面の解像度は、従来の紙メディアが電子的には不可能なほどの解像度をあらかじめ達成している以上、その紙メディアを凌ごうとする電子ブックの普及にとって重要な要因でなる。しかし、電子カメラや液晶パソコンを大ヒットさせた原因である液晶の驚くべきコストパフォーマンス向上によって、日米における電子ブックへの次のチャレンジが、もしかしたらマーケットのブレークスルーとなるかもしれない。
しかし、その立ちあがり方は日米で対照的に見える。日本では通産省が先頭に立ち有力出版社が参加して、電子配信や課金を含め150億円近い予算の壮大な「パイロット実験」から立ち上げる「開発型」だ。アメリカでは、名もない企業、ソフトプックプレス社が、各有力出版社や電機メーカーに呼びかけて「ベンチャー型」でこの試みを立ち上げようとしている。(ニューズウィーク6月○○号)同社の発表によると端末価格はA4サイズで299ドル、33.6kpsのモデムつきで、同社のサイトから300ページあたり、3分程度でダウンロード可能だ。そして最大の違いは、ページ表示が日本はスキャナー画像となると見られるのに対し、アメリカではインターネットに準拠したPDF(パブリックドキュメントフォーマット)ファイルが、標準になると見られる点である。
メディア企業という川上から始め、ほとんど全てのメディアデータが事実上「インターネット準拠」を志向するアメリカ。一方日本では出版産業のデジタル化を例にとると、現在のインターネットに適しているといえず、インターネットに準拠した標準化が進むとも思えない「漫画」や、ルビ表記といった問題が残っており、スキャナーデータの意義がありそうだ。しかし、その日本の独自性に留意を払いすぎると、メディア企業にとってデータを作るコストが高くなり、また、端末機器の価格が高止まりし、未来永劫検索になじまないという危険が生まれる事になる。
おそらくこの問題をつきつめれば、表記文字のアナログ文化か、表意文字のデジタル文化かという差が根底にある。電子ブックに限らず、日本語と日本のメディアが突きつけられている課題といえるのではないだろうか。
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