Blog

Prev | Top | Next

非理法権天

2006/03/03
歴史と社会

この言葉は楠木正成の軍旗に書かれた言葉です。
最近戦艦大和の軍旗もこれであったことを改めて知り、書くことにしました。

『非は理に勝たず、理は法に勝たず、法は権に勝たず、権は天に勝たず』 
(人事は、つまるところ天の命のままに動くもの、天を欺く事は出来ない) 「広辞苑」

間違っている人よりは正しい人が偉く、正しい人よりは法律のほうが偉く、法律よりは権力のほうが偉く、権力よりは天(天皇)が偉い。という意味です。正しさは下から二番目、法は下から三番目です。

例えば間違った社員よりは正しい社員が偉く、正しい社員よりは人事部が偉く、人事部よりは事業本部長が偉く、事業本部長よりは社長が偉い、というようなことです。

日本は自由な個人と、恒常的で一元的な組織を同時に持つことができた国です。
日本はその仕組みを作り上げるのに、無数の目に見えない主従関係を張り巡らすことに頼りました。
その主従関係は天において収束します。天はやや無能で無欲がよく、いざ、というぎりぎりの声を上げる役です。
そのおかげで日本近世の「家」は機動的な組織運営が可能になりました。
またこれは権力に対する革命を正当化するためにも使われました。
ようするに天の声があれば、権を追放することが可能です。
楠木の軍旗は、まさにこの意味で使われました。

一方、この社会構造の最大の問題は、天が黙っている限り自発的に社会を変える規範を持たないという点につきます。だから大きな改革、明治維新や終戦は、海外からの圧力に頼らざるを得ませんでした。
特に天が悪の場合、日本社会の組織は、組織ごと悪にまみれることが多かったようです。

今は近代。近世のこうした社会構造はだんだん変わってきていると思います。
しかし政治経済のいろいろな事件に出会うたびに、「非理法権天」の構造はまだまだ今この国に残っているな、という感慨を感じることも事実です。

TrackbackURL

http://www.nozomu.net/cgi-bin/cms/mt-tb.cgi/200

PostCommnet

サイン・インを確認しました、.さん。コメントしてください。 (サイン・アウト)

(いままで、ここでコメントしたとがない場合はコメントを表示する前にこのウェブログのオーナーの承認が必要になる場合がございます。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらくお待ち下さい。)


情報を登録しますか?


Comment

1 - Name: k.f. : 2006/03/27 23:13

「非理法権天」。二十数年ぶりに眼にしました。学生時代以来、お父上の著作の大半を愛読させて頂いてきましたが、あの幟が戦艦大和にも掲揚されていたとは気がつきませんでした。内藤初穂氏の『桜花』(文芸春秋社・1982年)でロケット特攻機“桜花”を装備した海軍721空・神雷部隊が幟にしていたと知ったのが私と「非理法権天」の出会いでした。
防御や運動性に劣る一式陸攻に2t近い桜花を懸吊したらどうなるか、海軍も飛行実験を通じて認識し、その4倍の護衛戦闘機(零戦)が必要と算出していました。しかし昭和20年3月21日の初出撃当日揃ったのは3倍の55機。被害を懸念した岡村司令の攻撃延期の具申が、『いまの情況で桜花を使えないのなら、使うときがないよ』という宇垣長官の言葉に遮られた経緯は戦艦大和の最後の出撃にも通じます。出撃一式陸攻18機の全滅と引換えに戦果無し。護衛戦闘機隊の10名と合わせ160名の戦死者の名簿には何とも言えない凄みを感じます。桜花を『この槍使い難し』と評し、出撃の朝、『湊川だよ』の言葉を遺した野中少佐の率いる一式陸攻の後ろに林立する「非理法権天」の幟が当時の写真に残されています。この時代、「非理法権天」は圧倒的な米軍に徒手空拳立ち向かう悲愴感と共にあった気がします。吉田さんの文を読み、自分の周囲でも小さな「非理法権天」の構造を感じるにつけ、個を強くと言う自戒と共にコメントせて頂きました。

2 - Name: bold : 2006/04/02 19:20

k.f.さま
コメントありがとうございます。
そういえば回天の天も、非理法権天の天だったのですね。

非権理法天ぐらいだと天も楽なのでしょうが・・・


Warning: include_once(): http:// wrapper is disabled in the server configuration by allow_url_include=0 in /home/users/2/nzm/web/nozomu.net/journal/000196.php on line 270

Warning: include_once(http://www.nozomu.net/journal/side_category.html): failed to open stream: no suitable wrapper could be found in /home/users/2/nzm/web/nozomu.net/journal/000196.php on line 270

Warning: include_once(): Failed opening 'http://www.nozomu.net/journal/side_category.html' for inclusion (include_path='.:/usr/local/php/7.4/lib/php') in /home/users/2/nzm/web/nozomu.net/journal/000196.php on line 270