「投機家に経営者は務まらない」とよく言われます。
もうひとつ。「アルバイト（派遣）の人に経営者は務まらない」もよく言われます。ちょっと考えてみれば、似たようなことです。

経営者は社会の中で特別な資質を持った人たち、特に上場会社のような公器の場合、経営者は社会の希少資源でです。（理想的にはですが）
彼らは株主、消費者からの信任に答えなければいけません。
彼らは従業員から尊敬されるリーダーシップを獲得しなければなりません。
彼らが求められるのは会社を持続させることであり、その長期の繁栄です。
一方投機家は、まったく違う生物です。
彼らがとりあえず信任を尽くすのはファンド投資家に対してであって、
投資する企業株主全般に対して、とは限りません。
投機家の場合、もっとも、儲かるのはその企業の少数株主や他株主とのゼロサムゲームを行うときです。（所謂売り逃げ）
この動機と成算を持つかどうかはインサイダー規制と密接にかかわるところであり、まともな投資家と投機家を区別するポイントとなります。
（ウォーレン・バフェットのようなまともな長期投資家は企業経営者を勤めることも可能です）
そして投機家の勝負できる時間は通常の投資家以上に、非常に限定されています。彼らが考える、いや、生命をかける時空間とモラルは、経営者のそれとは全く異なります。
ですから、「投機家に経営者は務まらない」というわけです。

乗っ取りを考える投機家には、したがって経営者パートナー（既存経営者を代替しうる経営者候補）が必要となります。
問題はまともな投資家にはまともな経営者がパートナーとなりますが、「リスキーな投機家のパートナーになりうるのは筋が悪い経営者」と相場が決まっていることです。また筋が悪い経営者と組んだ投資家は、「投資家とはもはや呼ばれず投機家と呼ばれる」と相場が決まっています。

　村上ファンドによる阪神電鉄買収における村上さんの課題は、「それを乗っ取った場合、いったい誰が経営者になるのか？」という点につきます。
電鉄会社経営がそもそも外部専門経営者には難しいと思いますが、それをあえてするかもしれなかったホリエモンは今、拘置所の中です。
この状況でまともな経営者は、阪神電鉄の経営者として名乗りを上げないと思います。村上氏のモラルは堀江氏のモラルとは全く異なると思いますが、それにしても村上氏がファンドマネージャーとして利益を上げる上では、堀江氏や堀江氏ライクな「野蛮な経営者」が必要不可欠であったことは事実です。

ついに吠えた！「命がけで経営しろ」

村上氏は同社買収で「わたしは経営に向いていない。経営者は命懸けの気概を持って、責任を果たしてもらいたい」と注文したそうです。

これは正直であり、ある種脅しとも読み取れる言動ですが、上記代替しうる経営者がいそうもないという点について足元を見られ、その居直りに対して、逆上しているという見方もできると思います。

話題は変わりますがそもそも。
野球球団はもっとも上場に向いていないビジネスのひとつです。
興行というのは売り上げが本当かどうか、確認するのが企業自身にとっても非常に困難です。チケットは、生花と同じ。その日を境に毎日価値がゼロになっていく商品です。そしてそこにはダフ屋が介在しています。客が入らないよりは、無料の観客であっても賑わっていてくれたほうがベターなのが興行の宿命です。
そしてグレーゾーンでいることにより生計を立てている人が、おそらくたくさんいます。
上場はその余地を大きく減らす行いです。
これに正面から挑んだ村上さんは結果は別として、ものすごい人です。

グレーゾーン（インサイダー系）Ｖ．Ｓ．グレーゾーン（ダフ屋系）
思わず・・・蛇対マングースの戦いという月並みな常套句が出てきそうです。

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