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「21世紀のインターネット広告」

2001/02/13
ブランドと経営

サイバー・コミュニケーションズ講演会ゲストスピーチ概要

1.職種ごとはじめまして

 最初に簡単に自己紹介をさせてください。
 電通ではさまざまな職種を遍歴し20年おりました。去年10月に退社いたしました。 メディアコンテンツ統括局調査部長、電通ドットコム取締役、電通総研研究主幹、21世紀計画室兼務が最後の職務です。 独立後、ノゾムドットネットという新しい会社を始めました。
  今はブランドとメディアコンサル。自分では「ビジネスアーキテクト」(ビジネス建築家)という新しい職種を標榜しています。 バブル後、リアルワールドを志向するIT企業と広告主、メディア企業などのリアル企業をつなぐのが、今の主な仕事です。まったく考えずにいきなり始めたのですが、少しずつうまくいき始めています。
  電通を辞めた後なぜ辞めたかを考えることがあります。さまざまな理由があって一言ではいえないのですが・・・・一番心にフィットする理由は次です。 去年アメリカンビューティという映画を見ました。ケビン・スペイシーふんする主人公は、42歳の広告マンです。広告は若いときに特に楽しい職業です、そうではないですか? やや白髪が出てきて老け込んできた自分、燃え尽き症候群の自分の像がケビン扮する主人公と重なりました。 もうひとつは父のことです。私の父は戦艦大和に乗っていて助かった人間です。あの・・・・・乗っていたのは宇宙戦艦ヤマトじゃありません。リアルな戦艦大和です。
  私が大学4年、21年前に父は56歳で亡くなりました。去年急にそのことが頭から離れなくなり、後自分の人生は12年しかないかもしれない、と思ったのです。

 今の実力、人脈を持って20歳代に返り咲いたら人生二度楽しめて面白い、と思いつきました。たまたまタグボートの岡康道、スポナビの広瀬一郎が同期であり、CCIの新井社長、と親しかったこともあります。電通を退社する中年社員は極めて少ないのですが、なぜかまわりには輩出したのです。彼らに刺激を受けなかったか、といえば嘘になります。新井社長を、僕は盟友と思っています。彼もそう思ってくれていることを願います。彼と人相・性格は違うが、あるところはとても似ているのだ、と僕は信じています。・・・信じられませんか?ということで彼ともども、私もどうぞ宜しく願います。

  電通総研にいて僕はそれなりにメディアの玄人の世界では有名になりました。
  といっても素人の風情を残さなければ偉大な玄人にはなれない業界ですが。得意満面のときに、あるアメリカ人のヘッドハンターに「お前の経歴はナッシングだ、ダブルネガティブだ」といわれ激しいショックを受けました。
 「マージンが保証されている広告業界の?しかも売上責任が無いシンクタンカー?お前は職業固有のリスクから二重に逃げている。製造業は研究をし、工場を建て、広告をしてそれで初めて売れるかどうか、大きなリスクを抱えている。そうした会社のまともな経営者は、お前のようなキャリアの奴は相手にしない」。
  復讐心に燃えて私はいつかそのリスクテイクをして「お前のキャリアこそ最低だ、日本の外資系企業の?ヘッドハンティング業?そこにはなんのリスクも無い」と言い放ってやる!と心に誓った事がありました。残念なことに彼の名刺を捨ててしまいましたが。
  もうひとつ、父の死ぬ前の言葉があります。 彼は銀行員でしたが、「銀行にだけは行くな」と言い残して死んだのです。その後バブルがきて、優秀な同胞・後輩の多くが銀行に行き、父の言葉は謎、というかむしろ間違っていたと私は長らく思っていました。広告より銀行に行けばよかったなと。それは嘘ですが・・・・しかし驚いたことに、その後日本経済の「失われた10年」の間に、いまや銀行業は人生の帳尻としては合わないことになってしまった。父はまったく正しかったのです。結局、この予言についての僕の結論は、「儲かることがあたりまえになった業界はささいなリスクを避けるようになり、儲かることがあたりまえになり、経済でなく、政治の原理が幅を利かすことになる。長い間に「その商売が本来なぜ成立したのか」のスピリットが次第に失われる。努力と成果のバランスが悪くなって、最後巨大なリスクに出会うことになる。だれも長期のリスクからは逃れることはできず、大蔵省、公共事業、銀行、金融がその典型だ」ということでした。 

 広告やメディアもそうでない、とは言い切れません。今後しばらくはいいとしても。金融業をみてもITバブルをみても、大もうけしたのは破綻の直前です。僕は自発的失業という小さな自分だけのリスクを、まずとってみよう、そういう奴―ずいぶんといやな奴とまわりには思われるかもしれませんがーが業界の周辺にいるほうが、むしろ業界にとっては健全だと考えたのです。

2.IT=インディビジュアル&チーム=個人組織革命

  ITというのは僕に言わせればインディビジュアル&チーム、つまり個人組織革命なのです。革命は目に見える外ではなくて、心の中に志として、ビジョンとして起こるものではないか、と思います。
  ITに携わるものは、単にその属する企業だけでなく、その本人自身が新しい発見、発展、そしてネットワークつくりを目指すべきだと思います。
  インターネットの初期にはまず、広告やメディアの中心から離れた人が立ちあがりました。そして大きな成功の次にバブルが起こりました。そしてそのバブルはもちろん消え去る運命にありました。
  しかしその大きな流れはまだこれから。リアルワールドが恐ろしい勢いでITとの一体化を始めるからです。そして新しいサービスや技術はその全貌をあらわしきってはいません。
 僕は広告やメディア界の天動説の真中にいましたが、やむにやまれぬ力に押し出されて、そのバブル後を構築する使命を授かった、と信じているのです。勘違い野郎だったらごめんなさい。自分が行き倒れても、その死骸を乗り越えて進む人が出ることを祈りながら、貴重な人体実験を行っているのです。


3.予測を語る男よりも未来を造る男でありたい・・・・

 本日の講演は新井社長に僕のお披露目をさせよう、という親切心によるものかもしれません。彼は僕に21世紀のインターネット広告の話をしろ、という。僕は今まで数限りない講演をし、様々な予測をしてきました。今日ここでもっともらしい予測をしてもいいのですが・・・しかしもう会社を辞めて正直な一個人になったのだから、すこし違う話、みなさんがあまり聞いたことが無い話をしようと思います。
  僕は実は、予測がきらいなのです。それはどこかしら人任せな気がするからです。今日の常識で明日を推し量ろうという狭量を感じるからです。予測にしたがってさえいれば自分の責任ではない、という無責任さを感じるからです。 僕達は今歴史が作られるその場面にいる。皆さんを含め、今地球で生きている全員がその歴史誕生の場面に毎分毎秒立ち会っています。すごいことだと思いませんか?
 残念なことに日本では森首相すら多分、自分が日本の歴史を作っている実感が無い。彼はおそらく自分は外国が動かす歴史の不幸なる被害者として、表舞台から退場していくのだろうと思います。まことに残念なことですが・・・今ここにいる人たちが、ITを通じて広告の新しい歴史を作っている、と僕は思いたい。なぜなら、そういう使命感を感じた人だけが歴史を動かすことができるからです。この中の、21世紀の広告を自分の手で作ってみよう、動かしてみようと考えることができる人たちに是非期待したいと考えています。


4.シンプルな予測は外れないが変化するときは重要な意味を持つ

 僕は80年代末から、極めてシンプルな予測の上で考えてきました。そのいくつかを披露したいと思います。
 単純な予測は案外外れないものです。問題はそれがいつ起こるか、そして今でも本当に正しいのかということです。

 最初はマーケットについて。オタク/専門家→ビジネス→家庭。ロジャースの「普及学」に登場する話です。従来のほとんどすべての技術の普及過程がこれにあてはまります。これはしかしネットワーク登場以前の話ということになるのかもしれない。以前は発展初期の技術コストが高く情報の伝播に時間がかかるから、普及上障壁があったのです。
 しかしネットワーク以降は、技術ではなくサービスが先に登場する傾向が強まっている。iモードがその典型です。またネットワークで技術を公開してベータテストやソフト開発を進める仕組みも増えています。PDA(携帯端末)のアプリケーションがそうです。オタク、専門家をとばして、家庭や学生がイノベーションを起こす時代になりつつあるのではないか、と思いはじめています。この変化の意味は重大です。なぜなら、消費者に近いところが研究開発を行う必要が生じるからです。それに気がつき対応する企業、しない企業の間で大きく差が開く時代がきています。


5.早すぎると賞賛されるが崖から落ちる (落ちて本望という人もいる)

 もうひとつは産業のレイヤーに関するものです。ハード→サービス→コンテンツ・ネットワーク。従来多くのメディア産業でこの順にキーファクターが変化してきました。しかし一方早すぎる動きは、面白みはあってもなかなか産業にはなりません。僕は常に「早耳すぎるプレーヤー」でしたが、その時期を客観的に見ることの大事さは、よく認識しているつもりです。今コンテンツの時代といわれています。僕もその到来を確信していますが、しかし本当にその波が産業的に来るには、インフラや技術、そして顧客数においてもうしばらくの辛抱がいるのだと思います。


6.人間の能力にまさるコンピュータは22世紀にも出現しない (というかそれを開発するお金があったら、自分の能力を高めるでしょう普通)

 最近、インターネットという言葉を使う人は少なくなりました。今みんながネットというようになったのです。僕も自分の会社の名前をノゾムドットネットと名づけたぐらいです。
  それは、従来ばらばらであったネットがTCP/IPやWWW、ブラウザーの標準化によって統合し、ついには世界がひとつになったからです。まあ、原潜の超長波通信装置などは将来も統合されないでしょうが・・・・ しかしその「ネット」がインターネットの最終形ではありません。
 ネットの先にいるのは個人で、それは消費者個人個人であったり、タレントだったり、企業の中の個人であったりする。それぞれがそれぞれと「P2P(ピアツーピア)」でつながるからこそ面白いのです。つまるところ、最も面白いコンピュータはコンピュータではなく、人間の脳なのです。


7.ネットワークに気配りを!禿げた人には毛配りを!

 ネットから先に、人がいてコミュニケーションを行うというリアリティ、それをネットワークやサーバー技術を駆使してヒュマンフレンドリーに行うサービスが、これから増えていくと思います。
 メールができて、継続的に付き合う友人の数が数人から数十人に広がりました。それがしかし、さらに数百万人に増えることに人間の脳は耐えられません。しかし数十億人の中から、自分と気があう友人を探すことができれば、人間の交友のフロンティアは劇的に広がるはずです。
  過去コンピュータのために用意されてきたいろいろな技術が、コンピュータ間ではなく私達人間、その脳や思考とネットワークをうまく接続するための技術やサービスとして登場してくると思います。


8.新しい電子メール広告の話


 今日は僕がCRLという素晴らしいソフト開発会社と一緒に現在試している画期的な電子メール広告技術のご紹介をさせてください。


※この画面はデモ用に作成したものです。

  これが広告の申し込み画面です。この仕組みについてはあれこれ説明するよりも、実際に皆さんにこのメールを送ったほうがわかりやすいと思います。


  これがお送りするメール画面です。

  最後に、ですが僕はもうあまり講演をしないようにするつもりです。そのかわり、せっかく貴重な時間をいただいて講演をするからには、是非皆さんに影響を与え、有志と心情、知識、志のつながりを持ちたいと考えています。
 せっかくこうして多くの人がこの会場に集まったわけです。サイバー・コミュニケーションズが設定してくれた今日の場の出会いが、新しいネットワークやエンパワーメントにつながれば、みなさんにとって、そして私にとって幸いです。本日の講演にご関心をもたれた人は是非メールをください。先ほどご紹介した電子メール広告を実際にご送付しましょう。ひとつだけお願いがあります。お持ちの電子メールソフトのHTMLをオンにしておいてください。デフォールト(もともと)ではそうなっていますので、テクスト受信にわざわざ変えた方だけ元に戻してください。
  希望者には僕の今日の講演録を添付します。そのように書いてメールください。

 それでは、また、どこかで。あるいはNetで。お会いしましょう。

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