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力量と運

2002/01/03
歴史と社会

この年末から新年にかけて読んでいるのは、マキャベリの君主論と政略論。
会田雄次さんという歴史家が責任編集した中央口論の名著です。

マキャベリの根本思想は「政治とは個人の道徳や社会の倫理から独立した存在である」という一言につきます。もっとわかりやすく言えば、政治を道徳から独立させて合理的な社会科学にしたのが、マキャベリの不朽の功績です。
同時にこの思想が、世の中の道徳家、例えばローマ教会や18世紀の啓蒙主義、あるいは20世紀のマルクス・レーニン主義など、政治の上により高邁な理想や道徳がある、と主張する人々=善良を装う権力家達or無責任な理想主義者達を、いたく刺激してきました。
そのせいで長年マキャベリズムという言葉は権謀術策の代名詞となり、マキャベリの書も「悪魔の書」として告発される原因となってきました。

例えばマキャベリの君主論には次のような言葉が出てきます。
「要するに加害行為は、一気にやってしまわなくては行けない」
「一方恩恵は、よりよく人に味わってもらうために小出しにやらなければならない」
「賢明な君主は、けちだという評判など気にかけてはいけない。なぜなら気前がいい、という態度では、直に人の金を略奪しなければすまなくなるからである」
「君主は愛される事よりは恐れられる事が重要である。しかし、人から恨みをうけないようにしなければならない」
こういう君主は隣人としては警戒すべきでしょうが、ニューウォー以降、世界の政治指導者の資格としては「まさにその通り!」と言いたくなる気がします。

マキャベリの思想のなかで特筆すべきキーワードがいくつかあります。
その筆頭はVIRTU(ヴィルトゥ)です。これは理想的な政治家が持つべき資質や精神態度であり、英語のVirtueと同じ意味です。簡単に言うと、これは人間に大事業を起こさせる力、例えば集中的な意思力や未来への根源的な洞察力、仲間をひきつける力などの活力をさします。
 一方で人間の行為は、その時点での情勢や環境-マキャベリはフォルトナ(運命=女神とされている)とんでいますが-このフォルトナに縛り付けられている事も事実です。マキャベリ以前の人は、このフォルトナはいたって気まぐれで彼女の気に入る人に微笑みかけるもの、と決め付けていました。だから多くの指導者には「神頼み」の心境が芽生えてきたのです。
しかし、マキャベリは合理的で独創的な考え方で、これまでの見方を一転しました。それは「運命をコントロールする力は短い瞬間においてのみVIRTU(ヴィルトゥ)ある人間に与えられている。」という考え方です。
つまり好ましい情勢を即座につかみとる力こそ、ヴィルトゥである。時代の流れを読み取り、もぎ取る力がVIRTUである、という考え方です。多くの人間は、何回かは環境を自分に都合よくかえるチャンスに恵まれるものである。その中でそのチャンスをつかめる数少ない人が、リーダーとしての資質を持っている。もちろん、完全に絶望的と思われる運命もたまに訪れることはあり、その前ではいかにVIRTUある人間も、敗退せざるを得ませんが・・・・
ということで2002年。おそらく世界的な波乱に満ちた今年、ワールドカップを開催する日本と韓国の「フォルトナ」を、我々はつかもうではありませんか。

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