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金と銀とプラチナと

2001/03/31
ビジネス

世の中には貴金属というものがあります。貴金属は腐食しないので尊ばれます。
よく知られているのはタイトルにあげた3つです。最も価格が高いのはプラチナ、次に金、銀の順です。
むかしは「金本位制」といって国際通貨(ポンドやドル)は金との兌換ができました。
金の信用が、通貨の信用を裏書していたからです。
今は違います。1971年、米国ははてしないベトナム戦争のせいで経済が疲弊し、
当時の大統領ニクソンが「金とドルとのリンク」を放棄すると発表しました。
いわゆるニクソン・ショックです。
米国は金ドル本位制に基づいた固定為替相場制が維持できなくなり、
主要各国通貨は変動為替相場制に移行しました。
世界的に金価格が高騰したのは、1979年のソ連のアフガニスタン侵攻の時です。
このときには史上最高値の1オンス850ドルを記録しました。
今思うと、世界がクライシスに慄いてきた冷戦時代の「いたちの最後っ屁」のようなできことでした。

その後は金に変わり、貨幣を持つ国々、そしてそれらをつなぐ国際的な金融システムの安定性や堅牢性といった抽象的な概念が、通貨の信用を裏書するようになりました。
僕が鮮烈に覚えているのは、1989年、ブラックマンデーという世界同時株安が到来した時です。
ニューヨーク、東京、香港、ロンドンと、夜明けとともに地球の回転の向きに株式市場が次々と大暴落をしました。
グローバルな金融市場が一つにつながったのだ、と心底感じさせる一日でした。
そのときにしかし、金価格はまったく上がらなかったのです。
つまり、金というものは通貨信用の裏書をする座から降りて、銀やプラチナと同じく、実用に耐える有意義な貴金属としての地位についに落ち着いたのだなと、当時通っていたビジネススクールのクラスメイトと語りました。
現実にその後も金価格の着実な下落は続き、ようするに実需が金価格をきめるようになったのです。

話しは急に飛ぶのですが、この数年ファッションの流行は、銀やプラチナを志向していました。
じゃらじゃらの金ではなく、どちらかというとしぶい、シックな銀とプラチナが愛されてきました。
しかし最近、トップデザイナー達はふたたび金を使うようになってきました。
この貴金属の流行が大きく変われば、一挙に洋服も靴も、そしてもちろん装身具も買い替えが必要になります。
多分デザイナー達は、この不況下のなかでそういう「お客様誘導戦略」にでているのです。
この戦略にのってゴールドで勝負するか、あきらめてシルバー系を続けるのか。
お洒落な女性たちの選択がみものです。

さて。私がこのエピソードに見出した細い糸がわかりましたか?
私はなんとなくこのテーマで書き始め、ここまで書いてみてようやく気がつきました。
偉大なるデザイナー達は、並外れた洞察をしめします。
彼らは多分、「金にこめられた過剰な信用価値が落ちきった」と判断したのです。
成金という言葉にしめされるいやらしさが、金から抜けたと彼らは感じたのだと思います。実需としての金という意味が、ようやく金融の世界から普通の人々の意識に落ちて、金はファッションでも「普通の貴金属」になってきたのではないでしょうか。

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