日本に敗戦はなかった |
2001/03/18 戦艦大和や靖国問題 |
96年のことです。私は成田社長に頼まれてある場所で講演をいたしました。
そのとし、ちょうど「動詞型生活者の誕生」という原稿を書き上げたばかりだったのです。
その会は海軍関係者ばかり数十人が集まっており、私のみるところ全員が70歳以上でした。
私の父は「学徒兵」で戦艦大和にのっておりましたので、最初はなんとなく親近感を感じながらの話をしておりました。
しかし途中から様子が変わったのです。私はこう話しました。
「日本は今3回目の敗戦を迎えています。最初は黒船で来たペリー提督。
日本は不平等条約をむすばされ、その改訂にものすごく苦労いたしました。
次の敗戦はもちろん第二次世界大戦。マッカーサー将軍が厚木に降りたってGHQによる日本統治、そして国体の改革が進められました。今は目に見えませんけれども、私は第三の敗戦だと思っております。インターネットの普及や直接金融の進展、そして情報開示という課題に、形は付いていっても実質がついていかない。その課題がこれからあきらかになり、私たちはもう一度人心を入れ替えて初心から出直さなければならない。ということになるのだと思います・・・・・・」
冷たい雰囲気のまま私は講壇を降りました。
さっと手が上がります。
「質問。あなたは先ほど敗戦と言ったが、日本は今まで一度も外国に負けたことなんかないんですよ。なに言っているんですか。」
私はあぜん!とし、そしてややムキになって反論をいたしました。
「連合軍総司令部民政局局長だったコートニー・ホイットニー中将という方がいらっしゃいます。連合軍当局が作った憲法素案を日本の閣僚に手渡したときに、彼は「マッカーサー将軍はこれ以外のものを容認しないだろう」と述べて、日本側に15分の検討の時間をあたえ、隣のベランダに退いたそうです。ちょうどそのとき、家屋すれすれに一機の爆撃機が家を揺さぶるように飛びさりました。検討時間が過ぎて彼はその部屋に入ってきたこういったそうです。
「アトミック・シャイン(原子力的な日光)のなかでひなたぼっこしてきましよ。・・・・・」
これがいったい敗戦でなければ一体なんなのですか?」
その方は反論されませんでした。
その後の歓談である人が寄ってきました。
「吉田さん、あなたのいったことは正しい。しかし彼はそれを受け入れない一生を過ごしてきたのです。私と彼と、あなたには同じに見えるが違うんです。彼の方が数年年上です。私たちの世代が特攻に選ばれて出撃する少年兵で、そのときにかれは特攻兵を選ぶ教官側、大尉という立場にいたのです。自分が命じて部下が死ぬという状況の罪悪感を、彼は選ばない生き方をした。そうするしかなかったのかもしれません。だから彼にああいう言い方をしてはいけないんですよ。
彼の先は・・・・まあ私の老い先もそうですけれども、そんなに長くないんですから、そおっとしておいてあげてくださいよ」
はげしい怒りと申し訳なさの入り交じった困惑を感じながら、私はその場を去りました。
そうか。この人たちには敗戦はなかったんだ。
おなじ日本人ですら歴史を共有することがむずかしいのであれば、外国の人との間においてそれはどんなに困難なことであろう、と帰る車のなかで僕は思いました。
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