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天使には褒美を、悪魔には罰を、人間にはフェアネスを

2001/03/10
人間というものは

人間の本質は基本的に「社会的」だ、と「大崩壊の時代」のなかで、フランシス・フクヤマ氏は説いています。
にんげんは完全に利他的でもないし完全に誠実でもありません。
もし、すべての人間がきちんと約束をまもる天使の社会があったとして、ちょっと悪い「日和見主義者」が一人だけいれば、彼は大変に大きな成功をおさめるでしょう。
(フクヤマ氏はモルモン教のさかんなユタ州で「ネズミ講」が多い例をあげています。モルモン教徒の弱みを知るちょっと悪いモルモン教徒がこれを行うそうです。)
逆に全ての人がことあることに仲間をだまし裏切る社会もありえない、と彼は言います。
なぜなら、悪魔の社会に少数の誠実で協力的な天使がいれば、その人たちは協力できない悪魔のなかでお互いに協力することにより、大きな利益を得ることができるでしょう。

ようするに私たちの住むこの社会は、さまざまな割合で天使と悪魔の両面を持つ人々からなりたつということです。ゲーム理論によれば、このような社会で生きていく時に必要なのは、「天使に褒美を与え悪魔を罰する」ことです。そのためには次の2つの能力が必要です。
 1)天使と悪魔を区別する特別な認識能力
 2)首尾一貫して応報戦略をとることを確実にする特別な感情もしくは本能

私たち人間は、顔の表情の微妙な変化やボディーランゲージの意味を読み取るよう、太古のむかしから訓練してきたのです。仲間、同僚、教師、戦友。まわりの人々の評価を得るために、私たち人間は「言葉」すらも発明しました。
「彼はなんでもないときには頼りになるがいざという時にはさっさと逃げ出し、あとで自分の手柄を主張しそうだ」こうしたニュアンスは言葉がなければ伝わらないからです。
私たちが会話を好むのは、かならずしも特定の事実や情報を伝えるためではなく、むしろ対話者との個人的な絆を強めるためでもあります。太古の昔から脱工業社会に至るまで概ね会話の大多数を占めてきたのは天気、共通の友人、私的な問題をめぐる世間話だったのです。

人間は共感や困惑、遠慮といった感情に突き動かされながら、たえず自分の行動を調整して他人の感情に気を配っています。
脳にはおびただしい数の「ソマティック・マーカー」というものがあるそうです。
これは感情的に引きつけられたり反発したりする感覚のことで、脳が目の前にある無限に多くの可能な選択を回避するのを助ける機能があるそうです。
例えば怒り、罪悪感、優越感、恥辱、屈辱。「規範意識」とよばれる特殊な感情を築くことにより、人間は合理的に行う事がむずかしい、あるいは合理性のみには立脚しない決断を行ってきたのです。
一度きりの「最終条件交渉ゲーム」というのがあります。第一プレーヤ−は第二プレーヤーでわけるために、100ドルを受け取ります。その後両者が合意をしなければお金は取り上げられます。もし二人が合理的ならば、第一プレーヤ−は自分が99ドルとって、相手に1ドル渡すことでしょう。どちらも合意をしないよりは合意をしたほうが得だからです。
しかし人間にはプライドというものがあります。第二プレーヤ−がそうした感情に支配されて申し出を拒否する事を恐れ、ほとんどの第一プレーヤーは50ドルずつにわけることを選ぶそうです。天使から(99ドルを相手にあげる)悪魔(1ドルを相手に渡す)にいたる選択肢のなかで、私たちが見知らぬ人との間で提供する条件は、「正直やフェアネス」という規範感情に支配されているのです。

天使には褒美を、悪魔には罰を、人間にはフェアネスを。

皆さん。これで世の中を渡っていきましょう。

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