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リクルートと電通の対比論

2006/08/30
ビジネス

私は今takibiというアカウントプランニング会社の社長をしておりますが、そのパートナーの朝倉さんは、リクルートの出身です。私はマクロミルの創業者の杉本さんと知り合ったときに、同社の優れたホームページ、ロゴ、キャッチを作った人を紹介してほしいと強引に頼み込み、数年前に朝倉さんを紹介してもらいました。
私はそれ以前に、「今後もし広告の仕事をするならば、そのパートナーはリクルート出身者だろう」と勝手に想定をしておりました。それもあって、そのときにすっかり朝倉さんと意気投合して今日にいたっております。

その想定の理由を少しだけ話しますと、私が元いた電通という会社は、過去多くの野人を輩出してこそおりましたが、近年とくに90年代以降、業界が非常に整備され高学歴の人が入るうらやむべき会社(つまりは賤業ではない)になったので、どちらかというと「官僚化」が進んでいるという見方をしておりました。
もうひとつには、広告業の利益の多くはテレビという規制産業から生まれ、そこは独占産業なのでつまり電通は独占産業と非独占産業(消費財メーカー)の仲立ちをしている、という見方もできます。そこからはなかなか、独立する気風というものは生まれ難いのではないか、と私は見ておりました。

この感想はおそらく正しかったと思います。Wikipediaの電通の欄に、元電通出身者が紹介されていますが、産業人は岡康道とかろうじて私ぐらいで、あとは作家、漫画家、俳優など独立自営業がほとんどです。(私も岡もその意味では独立自営業の範疇でもある)
一方リクルート出身者はリクルートを辞めても、永遠にリクルートマンです。野人を輩出しまくっています。近年自立独立した会社には、リクルート出身者がきら星のごとくです。これは電通との大いなる差です。リクルートのDNAは成功、とくにソフトコンテンツ・サービス産業における組織的成功を目指すようです。
(これは90年代まで顕著であったことで、2000年以降もそうなのか、官僚化が進んでいないかどうか、はわかりません。)

それで今日朝倉さんとリクルートという企業について話をしておりました。
本日の再発見は、「リクルートとは宗教である」
上記の思い込みでもわかるよう、これは私がもともと感じていたテーマなのですが、その言語化が本日ようやく可能になりました。

さてリクルートのテーゼについてですが、私が本日会話のなかで考えたところによれば、
1.会社(組織)の成功は個人の幸せにつながる
2.その商法は常に日常性・利便性の浸透を考慮せよ
3.したがってその組織・理念は常に合理性をもって改めるべし

この文化は電通にはありません。どちらかというと・・・
1.会社の成功は個人の幸せと別である(どちらかというと相反する?)
2.その商法には常に非日常(ドラマ)性の浸潤が見られる
3.したがってその組織・理念は非合理性を内蔵せざるをえない

とこんな感じです。
このリクルートのプラグマティックな文化は、日本の伝統的な町人文化や、あるいは江戸時代に石田梅岩の唱えた「石門心学」における個人と組織(社会)との接し方、勤勉主義の勧めの延長線上にあるように思います。この文化のもとでは、リクルートを辞めたあともある程度(同種の、とはいえるが)組織的な成功を目指すことが可能だと思います。そしてリクルートの人は、ありえないほどの複雑大量な作業を、どうみても個人が喜んでやってるようにしかみえない、組織がそれを個人の内面に動機付けているところがあります。

電通の組織文化にはそうしたオープン性はありません。もっと結社的な結合です。ありえないほどの複雑な人間感情を、どうみても個人が喜んで受け止めているとしか思えないときがあります。勤労への動機は内面的・感情的であり、組織にはまったく反映されないものであったりします。(これをよくいえば「奥深い」「人間力」など)
日本最大の結社的結合であるマスメディアを維持する産業装置であり続けるために、広告という最終的にエモーショナルな表現手段での価値最大化を目指すならば、そうでないとならない必然もあったように思います。そしてこの電通の企業文化がネット的な、web2.0的なコミュニケーションの発達でマスメディアごと、どう影響を受けるのか興味深いところもあります。

以上、ソフトサービス業の巨人二社の企業文化の比較、いかがだったでしょうか?

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Comment

1 - Name: 人事コンサルタント : 2006/09/13 22:02

はじめまして。リクルートと電通では組織アーキテクチャ(組織構造の原理原則)も大きく異なってくるのではないかと推察します。そこから自ずと人材像の方向性も違ってくるものと推察します。

リクルートは、細分化しながら広がっていくイメージでしょうか。ターゲットを細分化し、広告対象物を細分化し、情報誌というインフラの上で面的に拡大していく。組織も同質性を保ったまま、フラットなまま、成長していく姿が想像できます。

電通はいかがでしょう?商品のプロモーションではなくブランド、そしてコーポレートブランディングに収斂していく中で、組織アーキテクチャは階層性を持つものになり、アカウントプランナーが電通コアとして屹立していく、なんてことはないでしょうか。

同じく広告会社、マーケティング会社でありながら、異なったあり方になりうるのは面白いですね。

2 - Name: bold : 2006/09/14 01:14

確かに。リクルートの場合、独立自営型組織の構築が容易です。数多くのコストプロフィットに分かれます。コスト部門の意見は非常に弱いものがあります。
ところが電通の場合、利益の70%以上がテレビ広告によるもの。それ以外のメディア部門は赤字すれすれのところが多いです。そして、マーケティングやクリエイティブのすべての知的努力はそのメディアマージンのある種奴隷といっても過言ではありません。コミッション制度のもとでは、自立性は生まれません。それが私が電通から独立し、フィー制度にての自立を目指した理由のひとつです。


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