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高層ビルのテレビ局の調子が悪くなる理由

2006/02/18
メディア社会

これは、一種の「とんでも話」としてお読みください。

フジテレビのお台場の本社。面白い格好をしています。真ん中が低くて上に橋がかかっており、玉が載っている。この構造は別に酔狂ではありません。私は設計に携わった丹下研究室の俊英を知っているのですが、あれは真ん中の低層部分に大スタジオを置く必要から、です。スタジオというのは柱がない「がらんどう」ですから、その上に高層ビルを建てるのは構造上非常に困難です。
日本テレビの汐留本社にはしたがって、大スタジオはありません。大スタジオは大道具を入れるので、地下一階とか一階にないとだめ。高層ビルの最上階に作るとしたら、その階以外に意味がない、とんでもない大直通エレベータが必要になってしまいます。
その意味でテレビ朝日が、テレビ局としての身の丈にあった中層のコンパクトなビルを建てたことは(ヒルズ開発上の制約もあったのだろうが)、視聴率に反映するほどに正解だったと思います。

テレビ局の場合、「このスタジオ(番組制作)が編成や営業のすぐそばにあるという戦時感」だけが、テレビ局を真っ当に保つ感覚ではないかと思います。テレビ局の売り物は視聴率ただそれのみですが、その視聴率は現場のちょっとした度胸とか、思いつきとか、雰囲気にかかっているからです。これとともにない場合、営業や編成は、あたかも自分たちの努力、頭脳にて収益があがっているような誤解を持ちがちになる、ような気がします。

TBSで思い出すのは、赤坂の高層自社ビルができたときの開局特番(電通買い切り)でした。当時の社長以下テレビ局お偉方がタキシードを着てその番組に登場するのですが、予定がずれて、大橋巨泉、関口宏,山城新吾さんら(あと和田アキコさんもいました)大物と視聴者を待たせることになりました。出演者たちは相当怒っていたのです。

生番組にての大橋さんと関口さんのご挨拶は、一視聴者たる私をその前後10年以上記憶がないほどに震撼させました。
大橋さん「おめでとうございます。私は昔○○(忘れました)というすばらしい番組をやらしていただいており、視聴率でちょっと劣るものの、健闘し、あともうちょっとというときに、お金がないという理由で番組が終了いたしました。そのときからTBSは何でお金がないんだろうと疑問に思っておりましたが、本日わかりました。TBSはあの番組に使うべき金をこのビルに使っていたのだと。おめでとうございます。心からお祝い申し上げます」
関口さん「以前のビルでは時々、深夜馬のいななきが聞こえるうわさがありました。あそこは昔陸軍が使っており、軍馬がたくさんいたのです。みなさん、今度引越しをして、ちょっと猫の鳴き声が深夜に聞こえないかどうか、気をつけてください。このあたりは昔猫殺しをしていたという噂がある場所なのです。本当におめでとうございます。」
山城さん。ごめんなさい、覚えていません・・(たしか大物二人の度胸にあせっていた?)
「テレビ局たるもの番組を自慢すべし、決してビルを自慢すべからず」という強烈な教訓を感じました。
さて今日。いくつかのファンドやIT会社は、コンテンツもさることながら、その広大な土地を狙っている、という話をよく聞きます。しかし私は、上記のビジネスメカニズムから素晴らしいテレビ局(特に東京の)であるためには、大スタジオという低層の無駄なローテク設備を、至便な都心に保有している必要があるように思います。

などと説明しても・・・・所詮はとんでも話。
そういう投資家は多分この話を理解せず、どう見ても割安(時価総額を比較すると日本テレビは光通信より、テレビ朝日は大塚商会より安い)なテレビ局を狙い、土地の切り売りを図ることでしょう。まあ株価が安い理由は、土地やスタジオの件だけではないのですが、その象徴的なひとつの例え、として書きました。

テレビ局は今後常に買収のリスクに直面すると思います。私はテレビ局がそれでも上場を続けたい理由がわかりません。
テレビ局は報道機関として、ある程度公共性を担保するガバナンスが必要です。そのガバナンスは視聴者と広告主、あるいは安定大株主によるもので、流動性の高い株主によるガバナンスはそれらとは主旨を異にしています。おそらくその矛盾により、すでに普通の株主ガバナンスはこの業界に、働いていないのです。上場会社としてのメンタリティを強く持つ経営者がテレビ局にいったら、一方的に嫌われ排斥されるだけのように思います。
そして、上場によって獲得可能な資金調達力は必要なく(というか無駄遣いされてしまうw)、知名度はすでに日本随一、学生の就職競争率にいたっては日本一です。
つまり簡単に言うと「まともそうにみえる」とか「一流にみえる」といったイメージ以外に、上場している理由が見つかりません。しかるに、上場企業だからまとも、とか一流ということでもなく。むしろまともではない上場会社が、がんばりすぎてマネーゲームで転落するケースを見るにつけ、「やぶ蛇」「飛んで火にいる」などの言葉が頭に浮かんでしまいます。
ですから、たとえばマネジメントバイアウトによる非上場化を、真摯な選択肢としてお考えになったらいかがなのでしょうか?と余計な助言をさせていただきたいところです。

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Comment

1 - Name: アニマル : 2006/03/17 07:20

関口さんの話、なんか引っかかりますね。
その土地への関心、畏敬。それらを今のテレビ局
関係者はどれほど持っているのか?
最終的にそういうものが盛衰を
決めるのだと考えています。

ある種のにおい。そういうことを語れる人間が
テレビ業界には減ってきてるのではないですかね。
確実にそれはブラウン管を超えますから。
まあテレビ業界に限ったことではないですが。

それにしても流動性。曲者だと思います。


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