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Book Review:フランシス・フクヤマの3部作を5分で理解する方法
「歴史の終わり」「信なくば立たず」「大崩壊の時代」

2001/03/01
人生・本そのほか
フランシス・フクヤマという人がいます。
「歴史の終わり」(the end of history)「信なくば立たず」(Trust),「大崩壊の時代」(THE GREAT DISRUPTION)という3冊の大著を続けてあらわしました。
(名前でわかるように日系人です)

彼の3部作は一貫した問題意識に貫かれています。
農業社会から工業社会への移行にあたり、私たちの価値観と社会の変化を解明しようとして、多くの人たちーマックスウェーバー、エミールデュルケム、ゲオルグ・ジンメル−が社会学という学問体系を打ち出しました。
フィランシスフクヤマ氏はそれと同じ事を、工業社会から情報社会への転換において果たそうとしているのです。
「工業社会から情報社会の大きな流れが社会主義を崩壊させた」という見方に立てば、彼の当初よりの一貫性は見事なものだ、ということがわかるのではないでしょうか。
社会学が有用な学問だと考えられたことは(失礼ですが)、日本ではほとんどないのです。
しいていえば戦後、日本社会の建て直しを行おうとしたときがその時期だったでしょう。
しかしこのような視点に立って彼の著作を読めば、まさに情報社会の鳥羽口に立った日本、冷戦下もあいかわらず続く「社会主義国日本」が、どういう方向に向かうべきなのか、その際の課題は何か、どのような解決策があるのか、という点についての重大な示唆を読み取ることが出来るはずです。

「歴史の終わり」(the end of history)では彼は歴史の中でおかれた現代の位置を明確に表現しました。
簡単にいうと、ソ連の崩壊で私たちが卓越を求めて争ってきたフランス革命以降の歴史の激動が、ついに終わりをつげました。
ナチスドイツや戦前の日本もそうですが、選挙や思想、発言の自由を奪う圧政国家という仕組みは決定的に敗退し、その後は力ではなく冨を争う競争が永遠に続く。(ITバブルを一例とするような)
しかし、そこでは崇高な歴史を作ろうという英雄は現れにくくなり、退屈な時代がくることだろう・・・・

フランシス・フクヤマ氏はヘーゲルの研究家、コジューブ (ECを作った官僚の一人)の弟子でした。
この退屈な歴史、という着想はコジューブが昔の日本を観察して「すごい!日本はすでに歴史の終わりを生きている!」という感慨をもったことに由来していると思います。
(でも日本の歴史がこのまま終わるとやばいです。日本だけは(あと北朝鮮とかもそうですが)もういちど崇高な歴史が必要なんじゃないでしょうか!みなさん!)

次にあらわした「信なくば立たず」(Trust)では、歴史によって伝統的に信頼関係が形成されやすい地域とそうでない国があるとし、高信頼国家としてアメリカ、ドイツ、日本を、低信頼国家としてイタリア南部、ロシア、中国、東欧などをあげています。
全ての社会が国、と中間組織(会社、宗教、地域コミュニティ、学校など)と、家族の3段階の絆(信頼の範囲)によって成り立っています。
この3つのなかで、中間組織の豊穣さ、強さが、その国の「信頼」を決めるという非常にわかりやすい意見です。
国が強すぎると(例えばフランス)中間組織が自主的に組織化して社会の課題を解決することをさまたげます。(官僚主義対NPOの類)
一方、国が弱すぎて本来罰すべき犯罪すら野放しになると、家族主義が拡大し「マフィア」
がうみだされます。国は毅然とこじんまりと。
富んだ社会のためにはこれにつきるとそういうわけです。

彼がなぜ「信なくば立たず」を書いたのか、というとさきほどの「歴史の終わり」にしたがえば、歴史が終わった後は冨が「退屈な歴史」を作っていくわけですので、その富はどう作られるのか、それをつくる社会の条件とは何かを、考えたかったのでしょう。
その彼の新しい本は「大崩壊」の時代です。

「大崩壊の時代」(THE GREAT DISRUPTION)では、前の「信」につづいて、さらに議論を未来へと進めます。
工業中心で富を蓄積してきたこの200年の資本主義が、情報を中心に冨を蓄積する時代になったときに、社会がどう変化するのかをとりあげています。
彼は指摘します。凶悪犯罪の増大、家族崩壊、出生率の低下。
僕たちが今なんとなく日本社会の崩壊と受け止めている上のようなことがらは、実は日本だけではなく欧米の先進国がすでにみんな共通してなやんできた事柄なのです。
(日本のほうがまし、とさえいえる)
この理由を簡単にいえば個人主義が蔓延し、家族や地域がコミュニティとしての抑制機能をもたなくなったからですが、インフォーマルな、自発的な人間関係がそこにたくさんあれば、大崩壊は、すくなくとも超大崩壊は防ぐことができる、とそう読めます。

それで僕の関心事ですが、会社という中間組織が崩壊しつつあるいま、日本の中間組織をどこが担うのか・・・・
NPOとか友達とか、掲示板とか、そういう様々な条件心情を異にするインフォーマル「ネットワーク」の自発的な活性化にどうしても期待をしてしまうのです。

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