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ブランドのマジック

2006/08/31
ブランドと経営

ブランドは一度達成すると、人、金、モノがどんどんあつまるポジティブフィードバック(自己強化)の仕組みです。
それでは、ブランドでないものがブランドになるためにはどうしたらいいのか。
ブランドでなければ、人も、金も、モノも集まらず、相変わらず、しかも永遠にブランドになれないではないか。
こうした疑問がわいてきます。

この疑問は特に若い人に顕著だと思います。
私はどこかで、「ブランドでないものがブランドに化ける瞬間」があるのだと思います。
それは努力で身につくものなのかどうか。
たとえば、ロールプレイングゲームの主人公のように、勤勉と修練によって身につくものなのかどうか。
もしかしたら、そうではないような気がします。
つまりじっくり、ということではなく、ある一瞬の気合のようなもので脱皮や開花がすすむ。
そういうメタモルフォーゼの瞬間があるように思います。

一つ目のたとえ話は、小樽がなぜ寿司で有名になったのか。という話です。
これは伺った時に聞いた話ですが、あるときに小樽のおすし屋さんが、集まって魚供養をしたそうです。
その直後に札幌の寿司屋で食中毒があり1000人以上もの修学旅行生を小樽で受け入れられるかどうか、の打診が小樽のあるお寿司屋さんにありました。
普通であれば、断っていたことでしょう。
しかしたまたま魚供養で集まった名簿および連帯感があったことで、短い間に連絡がつき、1000人以上の修学旅行生を受け入れることになりました。それが人気を呼んで、寿司といえば「小樽」となり、いつのまにか「寿司銀座」ができて、小樽の名物のひとつになっていきました。偶然ともいえますが、魚供養という心がけが善をなした、という功徳話にも読み取れます。

もうひとつのまったく異なるたとえ話です。
これはアメリカの元国務長官、隠密外交により米中国交回復を成し遂げたキッシンジャー博士の逸話です。
キッシンジャー博士がいかに外交的に悪知恵が働く人なのかについて、(彼自身がそうであったところの)ユダヤ人達が広めた古典的なジョークです。

キッシンジャー博士は、ある貧しい農夫の息子の縁結びの役を演じることになりました。
「あなたの息子さんにぴったりのお嫁さんを見つけましたよ」とキッシンジャー博士。
「せっかくですが息子のことについては決して口を出さないことにしておりまして」と農夫。
「でもその娘さんはロスチャイルド卿のご令嬢ですよ」
「うーん、それならば・・・」

それからキッシンジャー博士はロスチャイルド卿のところへ行きました。
「お嬢様にぴったりのお婿さんがいますよ」
「いやうちのはまだほんの子供だ」とロスチャイルド卿。
「そうですか、でもその青年は世界銀行の副頭取ですよ」
「うーん、それならば・・・」

それからキッシンジャー博士は世界銀行の頭取を訪ねてこういった。
「副頭取を見つけましたよ」
「いや、副頭取はこれ以上いらん」
「でもその人はロスチャイルド卿の娘婿ですよ」
「うーん、それならば・・・」

ここには類まれな計算と狡猾さの見本があります。
しかしその背景には、ビジョンとファンタジー、くそ度胸と人脈ネットワークがあることも事実です。
もっと言葉を足せば、「集中的な意思力、未来への根源的な洞察力、仲間をひきつける活力」などです。

ブランドでないものがブランドになるときに、
一度はわたらなければならない勝負というものがあるように思います。
ブランドをコントロールする窓は短い瞬間すべての人間に開かれている。
その瞬間を感じるかどうか。感じる仲間がいるかどうか。行動する意思があるかどうか。
ということではないかと思います。

ご参考:幸運の女神の後ろ髪をつかむ方法

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Comment

1 - Name: sumikowatabe : 2006/09/01 12:46

タイトルのブランドから、すぐご著書の「ブランド」を思い出しました。
マスコミと全く関係ない仕事の私ですが、
吉田さんの洞察力と分かりやすい説明、
そしてお二人の会話がまるで掛け合い漫才みたいで
(ごめんなさい!)、面白かったです。
半年くらい前に読んだのですが、お二人の深い友情にも感激でした。
吉田さんの独立のきっかけになった岡さんの言葉は、
見ず知らずの私でさえジーンときました。
人生の中でこんな言葉を言ってもらえる人は、いないなって。
お互いに「この人のためなら」って大人になっても思えるなんて、
本当に羨ましいです。
「ブランドⅢ」を楽しみにしています。
本の感想になってしまいました。

「幸運の女神の後ろ髪をつかむ方法」の計画と理論のお話、
とても興味深く読ませていただきました。
ただ、私には悲しいかな今ひとつ「理論」が理解できないのです。
知りたいのに、何度読んでもよくわからないのです。
もし出来るのなら、理論の方をもっと書いていただけると
嬉しいです。
ずうずうしいことを書いてしまい、ごめんなさい。


2 - Name: bold : 2006/09/01 20:06

sumikowatabeさま

理論は世の中の成功の数だけ、生活と人生のまわりに無数にあるのです。
小樽の例でいえば、「もし寿司屋が提携すれば小樽も、札幌に負けないぐらいの寿司人気が出るはずだ」
これは立派な理論です。

sumikowatabeさまのごく身近にも、無数の理論があるはずです。

3 - Name: bold : 2006/09/02 01:02

追記です。
もし小樽のお寿司屋さんに「札幌においつくぐらいの寿司屋街になる」という「計画」があったら、その計画はほっとかれ無視される以外になく、その責任者は、まじめでは勤められなかったことでしょう。
というのは、それは札幌で食中毒が起きて旅行会社が困った、という僥倖がなければ、きっかけがつかめないことだったのです。
一方、寿司屋が結集すれば札幌以上の魅力があるはずだ、という理論(勘違いではない程度の妥当な思い込み)があれば、いざ、というときに、すぐに「とても無理ですね」と断らず、なんとか街の業界を束ねよう、という気概や行動力が生まれる可能性があります。

チャンスは平等に訪れます。
しかしチャンスに気がつくか。
そのときに行動ができるか。
ここに大きな差が生まれる気がします。

4 - Name: sumikowatabe : 2006/09/02 09:26

吉田望さま
お忙しいところ、お返事を下さりありがとうございます。
計画と理論の違いが分かり、すっきりしました!
丁寧に書いて下さり、本当に感謝しています。
私のまわりにも無数の理論があるなんて、何だか嬉しくなりました。
最後の「チャンス」についての言葉は、すごく簡単のようで、
深い言葉ですね。
「気がつく」と「行動」。これからは気をつけていたいと思います。
本当にありがとうございます。
ブログ、これからも楽しみにしています。



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