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虚業家の見分け方

2006/02/06
ブランドと経営

このエントリーは、
「詐欺師と虚業家の華麗な稼ぎ方」中経出版 山崎和那著
の書評であり、オマージュです。

碩学、博覧強記、実業経験豊富、そしておそらく大虚業家の探求に心底心を奪われた著者による、高級ワインのように熟成した本はタイミングもばっちり。大推薦します。

エッセンスを紹介させていただきます。

○「虚業=堅実でない事業」は誤解である。
アラビア石油、メイフラワー号への出資、オランダ東インド会社への出資は虚業であったのだろうか?

○「虚業=実務を伴わない事業」は誤解である。
むしろ大虚業家といわれる人たちは広く実務も行っていた。
(人を大きくだますわけだからその装いは当然念の入ったものとなる)

○「虚業=モノを生産しない事業」は誤解である。
銀行はモノを生産しないが、それでは虚業なのだろうか?

○「虚業=非合法事業」は誤解である。
虚業家こそ、自分の立場の危うさを知っているため、ことさら違法行為を戒めていたりするものだ。

○「真の虚業家は刑務所にはいない」(w)

○「たまに大虚業家がいると聞いて会いに行くと、堅実な生活態度で自律している教養人だったりして、がっかりする」

○初期の実業思想の骨子(享保以降の商人道)

1)一回の取引で最大限の利益を獲得しようとはしない。
「適正利益とは、相対取引でなく、公開市場で継続可能とする範囲の利益をいう」
2)顧客との取引を継続することによって、長期的に自己の累積利益を大きくする。
3)そのために顧客との間に長期的・累積的な取引関係を樹立する。
4)当然、顧客の利益も考慮に入れる。
5)相互信用に基づく共存共栄の良好な関係を築く。
6)顧客が顧客を呼ぶという人脈を形成して販路を拡大し、利益の拡大に直結する。
7)長期的に信用を得るために、地域社会に貢献する。

日本における「虚業」とは、これらの思想からの大いなる逸脱をいう。

最後に。この本の白眉です。

本来実業であった事業が虚業化するパターンは以下の四つである。

1)経営者が権限を乱用して恣意的行動をするケース
「最後の権力者たる経営者が、私腹を肥やすために会社制度を操作する場合は、いかに「まともな企業」であっても、虚業とならざるを得ない」

2)市場経済システムを操作して不当な方法で利益創出するケース
「投機活動そのものは、資本主義発展の最初の担い手が投機家であったという歴史的事実からもわかるように虚業ではない・・・これが虚業となるのは、市場のルールを破壊したり、欺瞞行為を行う場合である・・・ビジネスモデルそのものが政治権力の力学を前提にしているようなケースは、まさしく虚業である。

3)経済力の集中と「強者の論理」を度を越えて図るケース
「産業システムを操作し、社会の利益を犠牲にして私利を図ると、それはすでに虚業の範疇である」

4)実業がその遂行上のミスで虚業化するケース
「当事者にその意識がないままに虚業化してしまうケースも少なくない・・・特に営業部門で発生しやすい。軽く考えれば「勇み足」だが、これを管理者が認めたり、みて見ぬふりをすれば、容易に虚業化する。」
「ミスは人間である限り避けられない。そのこと自体が問題ではない・・・もし善後策が決まっていなくてもとりあえずその事実だけは報告しなければならない。これを怠り、一定期間放置しておくと、これは虚業か、場合によっては犯罪になる。」
「経営理念、経営戦略、経営組織の順を取り違えると虚業化する」「文字どおりの本末転倒」「当事者には虚業という意識はなく、大真面目であるから始末に負えない」

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