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非常に重い奥田碩日本経団連会長のライブドア批判

2005/02/25
ライブドア

私は若きころ広告会社にいてラジオ媒体の営業を担当していました。20年ほど前の話です。日本ではラジオ産業は衰退産業です。1994年に2029億円だったラジオ広告費は、2004年には1795億円となりました。2004年にはインターネット広告費が1814億円となり、ついに逆転を喫しました。
 ラジオ産業はほぼ100%広告に依存しています。ラジオ広告の中でもっとも重要なのは、自動車会社および自動車販売会社(たとえばトヨタオート)です。ラジオ広告費の20%弱を占めています。(ちなみにそれに続くのが金融保険・流通産業などです)
 なぜ自動車産業か、といえば、そもそもラジオというのは移動の最中に聞くので自動車が非常に重要なメディア空間だからです。自動車移動の最中を快適に、という意図や、あるいはドライバーたちの支持を得るために自動車産業はラジオを支援してきました。しかし自動車産業はラジオ広告出稿を、ずーと重荷に感じてきていることも事実です。
 この状況で自動車・金融産業・音楽産業はラジオ広告産業にとって死命を決する重要度を持っています。
 ライブドアがニッポン放送を買収するときに、もっとも重要なのは広告主の動向です。政治家はお金(広告費)を差配できるわけではありませんので、彼らの意見は株主にとって大きな意味を持ちません。(むしろ政治家の発言は株主軽視でありできれば無視したいといえる)しかし、広告主の動向は収益、業績、そして株価にきわめて本質的な影響を及ぼしますので、株主としてもその意見は注視せざるを得ないと思います。
 その状況で今回、自動車産業のトップであるトヨタ自動車の出身で、経済界に大きな影響力を及ぼす奥田碩日本経団連会長が、ライブドアの経営姿勢を批判したことには非常に大きな意味があります。広告出稿の意思決定プロセスとして、必ずしも広告主の経営者トップが関与するわけではなく、広告会社の提案であるとか、宣伝部、事業部における効率・イメージ判断が大きく左右します。しかし、それらは「以心伝心」ではあるのです。そして経団連会長の発言はともかく重いです。
 主要な自動車産業広告主に内密でヒアリングをしたところ、いずれもライブドアが買収したあとにニッポン放送に現況の広告を行い続けるか、ということについては否定的でした。そもそも現状でも「できれば減らしたい」と思っている広告主が多いのです。金融産業へのヒアリングはしていませんが、おそらく同様でしょう。フジサンケイというグループに敵対して特定のラジオ局を支援する理由は、彼らにまったくありません。飲料、トイレタリー、電機、精密、情報、流通、サービス、官公庁産業においてもほぼ同様です。
 さらにインターネットとラジオとの融合ですが、現状これが進んでいない理由は別にラジオ局の経営姿勢にあるのではなく、音楽著作権の問題が大きいのです。音楽業界はラジオ局がネットに進出することに反対しています。音楽なしのラジオ放送というのはまったく意味がありません。すなわち、音楽産業界とのコンセンサスの現状がラジオ産業がインターネットに進出できない大きな理由です。もしラジオ産業が音楽込みでインターネット産業に進出を行おうとすれば、法的訴訟や広告の減少などを覚悟しなければなりません。

 今回ニッン放送がいわゆる「ポイズンピル」と呼ばれる新株予約権を大量に発行し、フジテレビが購入する方針を発表しました。これに対しライブドアが差し止めを求める仮処分申請訴訟を起こし、法廷にて議論されることとなりました。その法的判断で重要なことは、どちらの支配が事業体として事業を継続・拡大していく能力が高いのかだと思います。この判断において広告主の意見を代表する奥田碩会長の発言をもって、すでにあきらかといわざるを得ません。

 (筆者の立場を明らかにすれば、広告会社やメディア会社とは現在特に利害を一致しておりません。また、ラジオ産業が現在の状態のままでいいとも思っておりません。私が若き日に輝いていたニッポン放送の今日のていたらく(聴取率的にFM放送やTBSラジオの後塵を拝するにいたった)はきわめて残念と思っております。また日本のラジオ産業の根本課題として、地区あたりの局数が少ないという問題があると考えています。それぞれのラジオグループに複数局の保有を許し、アメリカのように特定の音楽や信条にもとずく、そして個人聴取者のSOULに響く若干過激な放送局が登場してくれないかな、と願っています。それがもし実現した際には、堀江社長には是非、そうした過激な一放送局のDJを勤めてほしいと思っています。・・・)

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