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クラブスピリットは蘇るか

2002/09/12
ビジネス
「インプレッションビジネス」10月号掲載です。




本誌は、おそらく日本のなかでもっともゴルフ会員権の保有比率の高い会員誌のひとつであると思われる。ということで今回はゴルフ会員権についての話を。

私の父方の祖父は明治末期の生まれ。富山から上京して東京で電気工事の中小企業を興した人間であるが、彼は昭和15年に東京ゴルフ倶楽部の会員になり、そこを本拠地としていた。戦後もゴルフを続け、業界紙に掲載された自分のゴルフ自慢を、よく聞かされた記憶がある。
この東京ゴルフ倶楽部は戦後、株式会社から社団法人になり、私にとっては残念なことであるが会員権の相続ができなくなってしまった。現在は一代限りの会員制となっている。これは私の推測であるが、戦後、多くの人々にとってゴルフ会員権の相続は難しいものとなり売買が進んだこと、そうした新規会員が伝統ある倶楽部の経営維持にとり歓迎すべきものではない、という風潮が生まれてそうした改革がとられたのではないだろうか。
伝統あるゴルフ倶楽部を選ぶためには、相続制よりも社団法人型のほうがいい、ということになったと思われる。

しかしそうした伝統あるゴルフ倶楽部の経営も昨今はさほど芳しいものではないと聞く。会員が高齢化して日々の入場料収入が減少しているため、ゴルフコンペの受注や会員権販売による収入をあてにしなければならないところが多いようである。

ゴルフのバブルがはじけてみると、日本のほとんどのゴルフ場はある種パブリック化して誰でもどこでもプレーできるようになった。アメリカン・エキスプレスのゴルフデスクを私は愛用しているが、大半の希望するゴルフコースで楽しむことができる。
ゴルフプレイヤーが自由にゴルフ場を選ぶことができる時代、それはゴルフの究極の大衆化ともいえるのではないか。
一方で伝統ある倶楽部ライフ、プライベート性を謳うゴルフ場は次第に天然記念物化しつつある。60歳以上の高齢会員が増えて、伝統と倶楽部ライフの実務を担うべき次世代を見つけられずにいるように思える。

この夏、縁あって私はブリックアンドウッドクラブというゴルフ場の会員になった。ゴルフ雑誌や全国コースガイドには載っていない。知る人ぞ知るゴルフ倶楽部である。
最初から株主会員制を採用し、会員がコースやクラブハウス建築を自らの総意として進めていく。クラブハウスはナチュラルでどこか品のいい別荘を思わせる。運営経費を節約するためにプレーヤーがキャディーバックを自分たちで降ろし、カートに積む。フロント9を終えてもレストランに行かず、おにぎりやホットドックをほうばりながらバック9へ進む。
会員は年間のミニマムフィーが決められており、それ以上に当倶楽部を利用することを期待される。週末には会員自らの手でさまざまな催事が催される。こうしたゴルフクラブは、今の日本にありそうでなかなかない。

日本の最初のゴルフ倶楽部は「六甲ゴルフ倶楽部」である。それは文字どおり「ゴルフ仲間」とし始まった。そして倶楽部はゴルフという志に集うNPOの香りを漂わせるべきものである。ゴルフの楽しみと求道の苦しさの、どこかで折り合いをつける仲間こそが、ゴルフ倶楽部の本質であろう。

ブリックアンドウッド倶楽部は今、創業の時にあり、倶楽部の本質とはなにか、という問いに会員自ら答えを見つけようとしている。それはまだ見つかっていないかもしれないし、会員の会話や切磋琢磨によってしか、見つけることができない手間のかかる探求かもしれない。
しかし20世紀の終わりに日本のゴルフに起こった「総パブリック化」現象の先に、新しいプライベートなゴルフ空間が生まれることを、私は期待している。

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