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グレーゾーンに挑むエリートへの忠告

2006/02/04
ライブドア

これは2001年の3月に書いたエントリ(悪は盛り場にあり)に若干、書き加えて訂正したものです。

私は大会社(上場前)調査部長であり、またIT投資ファンドの役員も兼務しました。そうすると世の中で見たくない、しりたくない、近寄りたくない一面を見ざるをえなくなってしまうのです。
会社中が調査機関のようなところで、なんでわざわざ調査部だったのか?シンクタンクから本社に戻ってきてミッションがよくわからず、悩みに悩んだ命題です。
そこで、男性週刊誌に時々あるような・・・「普通の会社員が調査できないこと、調査したくないことをするのが仕事」とわりきれば、俄然調査部長の「存在価値」がでてきたのです。(そんな存在価値出てどうするという意見もあるが)
というのも世の中誰かが、グレーを白か黒に分類する調査をしなければなりません。その審判は、会社上場のときにやっています。
上場および上場広告の審査は、大手広告代理店や日経や東証らが果たすのです。

例えば・・・「今度上場する○○会社の社長のK池さんは総会屋の息子と聞いたが本当ですか?」
「なぜ僕に聞くんですか」「あなたの会社を通じて日経に上場告知を出します。そしてあなたが詳しいといううわさが出たので・・・」
など、ということが生じます。
しかたがありません。人づてで彼の結婚式に参加した人を探して、どんなお父さんだか聞きます。「ぇ、○○建設の役員!」セーフです。その人はやっかみにあって讒言を飛ばされたのです。そして・・・また調査の実績が積み重なってしまう!(悲鳴)

もっとすごかったのは、偽の放送テープを流して架空請求していたさる大手経営者の師弟社員が、告発を逃れるべくそのテープを明るみに出すと社を脅し、あちらの世界にいってしまったことです。この件で調査部長(私)は憤死してしまいました。

某ヨーロッパの大使館員が来て名刺も出さず、「ある国営放送局が危ない人と組んでしまって。母国では彼らはすぐにわかる。なぜなら彼らは毛むくじゃらで黒いから。しかし日本ではまったくわからない。どうしたらいいでしょうか?怖いので私は本国に帰ります」と相談に来たこともあります。

私の前にその手の対応を一手に引き受けてきた専務はガードマンがついていましたが、肺機能低下症で突然死しました。「警察に相談したら一人で電話取るなっていわれちゃってさ。一人だと殺されるかもしれないからだって」という苦笑いをいまだに覚えています。

会社を脅す権利というものがあり、それが継承されることを学びました。退職者の人が先方にカモ情報を流していることがわかりました。
有力者の師弟社員に不祥事がおおいのは、決して偶然だけではないことも気がつきました。彼らを狙うと、クライアントから会社のすべてを巻き込むので、一粒で何度もおいしい脅迫ねたになってしまうのです。


私の結論は、世の中わるい人がいるな、ということです。あたりまえすぎたでしょうか。彼らは普通の人を恐れています。彼らのビジネスに無神経に乱入して騒ぎを大きくするからです。毅然とした人の前で彼らの行為は恐喝になってしまいます。
メディアに出たら彼らのビジネスチャンスは去ってしまうのです。
彼らはそうとう怠惰です。簡単にすぐに儲かる。これが彼らには重要なのです。
ファンドや企業の上場は、まさに短期で儲かる濡れ手の泡系です。
もし勤勉なら普通の仕事でも大成功しているタイプの人たちが多いのです。
それがいやだからグレーゾーンの稼業を続けているのです。
彼らにはある種の正論があります。悪を務めるからにはそれを補う、なにかしらの「正義」が必要なのです。

数年前でしょうか。「出張ホスト詐欺」という商売がいっせいを風靡しました。そのやりかたは最初「君はすごくホストに向いているから」といってテスト入会させ、ものすごーく色っぽい和服のマダムを派遣するのです。
「もうあなたにメロメロ」と言わせといて、寸止め、で彼女は帰ります。
「いやーあなたはほんとうに才能があふれている!」そう断言して、数十万の入会金をはらって出張ホスト倶楽部に入会させるのです。
次にくる客は出張ホスト倶楽部の超上客です。もう数千万円使っているそうです。
「大事におもてなしするように、君を見込んで頼むよ」
きてみると、これがとんでもないババアです。そしていうことが罵詈雑言、無茶苦茶、そして無理難題です。怒鳴り散らして帰った客のあとで、倶楽部のマネージャーが来ます。
「まずいよ、あれは。大損害だよ」彼はしかたなく退会します。
しかし・・・・現実にそれが詐欺だ、と気がついた人はそんなに多くないのです。
被害が数十億円になるまで、気がつかないのです。ばれたのは、テレビ局に何百と内部告発があったからです。
おもしろいもので人間は、「俺は本当はホストの才能があったのに、運悪くとんでもない目にあって駄目だった」と自分を納得させるのです。その冥土へのみやげ話がたかだか数十万円だ、としたら、たいして悪い話でもないのかもしれません。もう一度同じはなしが来たらまた入会するかもしれません。
(ほら正論が、ここにもあるでしょう?)

私の結論は人間つぎの3点だけ気をつけよう、ということです。

1)悪は盛り場にあり
簡単にお金が手に入るのは人が酔っ払って無防備になるときです。だから悪い人の多くは盛り場にいます。(人口密度以上に・・)
もし女好きだったとして、野原とか高原でナンパをしたとして、相手が悪人である可能性は限りなくゼロに近いと思います。一方海岸、はどうでしょうか??
 ようは場所に気をつけることです。いまどきヒルズは銀座六本木なみに危険です。あとカメラ盗撮に気をつけましょう。(追伸;最近はウェブカメラが多く、ネットから操作可能です。)
盛り場に位置するカラオケボックスで隙がありすぎる女に手を出さないことです。スポーツ選手、芸能人らはその手口でつかまります。
 IT企業のいくつかは、ダイアルQ2事業から始めていますが、その初期に会社が立地するのが盛り場にあるその手のビルで、そのときに関係をもったりしてしまうのです。
ひとついえることは、その手のビルは入居者全員があちら系(当たり前のことであるが)の場合が多いです。ビル一階の入居者看板に弁護士事務所、会計事務所の名札がある場合、本当に実在するかどうか調べてみましょう。

2)むこうからよってくる人には気をつけよう
これもあたりまえです。キャッチという商売がありますよね。あれも向こうからくる商売です。あなたが有名で名刺をばらまいて、豪遊しているときに近づいてくる人、とくにお金持ちそうだったり、ものすごく美人だったりした場合、にはちょっとだけ警戒しよう、とそういうことです。
(善良なお金持ちや美人がよってくることもそりゃたまにあるでしょうから)

3)奥さんが怖い人は気をつけよう
ようするになにかあっても、人に話せる、公にできる話はこわくない、ということです。
ところが奥さんが怖い人の場合、ちょっとしたスキャンダルでも絶対に表にだしたくない、と
こういう心理が働きます。そうすると今度は、隠したという事実が次のネタになってしまいます。脅す側と脅される側が一種の共犯関係になってしまうのです。

私はしかし上記の体験を貴重な糧としました。もしシンクタンカーのままだったら大会社を辞めても、大学の先生にでもなるしかなかったでしょう。(先生には失礼な言い方ですみません)
しかし「これ以下はあまりないかなー」という下の下も、一応瞬間垣間見たのです。これなら個人事務所でやっていけるかも。そうした度胸がついたのはこの体験のおかげでした。

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Comment

1 - Name: yu-ji : 2006/02/04 06:05

はじめまして

なぜか顧問に塩野七生さんの名があったのが不思議だったのでお邪魔してしまったのですが・・

ブログを拝見しました。なぜか最近(今大学四年でこれから社会に出ようと明るい未来を夢見ている時期)、やたらと裏社会というのでしょうか、そういった情報が入ってきます そういった情報を見た際、まじめな私は「おいおい、社会ってなんなんだよ」と一種の虚しさを覚えます 

そういった中で、吉田さんはどういった規範(スタイル、原理原則)を抱いてお仕事をされているのでしょうか?もしよかったら、教えていただけないでしょうか

2 - Name: bold : 2006/02/04 22:15

yu-jiさん。
非日常的規範を唯一の規範として日々を生きる人が「裏」の人たちです。
うろ覚えですが、丸山真男の引用です。(間違っているかもしれない)
世界のどこでも「裏」があります。
裏がない国はグリーンランド、ぐらいかと思います。(よくはしらないけど)

ご参考。
ワールドカップフランス大会で考えた事
http://www.nozomu.net/journal/000006.php

日本は世界のなかでも相当まともな国です。
この場合のまとも、というのは「裏」と「表」(政治、法執行、警察、軍、官僚)がつながっていないことを意味します。
これがイタリアとか、ロシアとか、中国ですと、裏と表がつながっているのです。
これが「無規範」ということです。これは相当恐ろしいです。

日本はそうではありません。
またそうなることを防がねばなりません。
「裏」は「裏」らしく。普通の人と違った容貌、価値観、ようするに異形でいてほしい。
(となると今度はある程度、裏を表に化けさせず、裏の世界なりに立てることが世の中にとっていいことかもしれない、という逆説も登場してしまうのですがね・・・。

3 - Name: yu-ji : 2006/02/05 07:03

とすれば、「裏」というのは必要悪ということになるのでしょうか・・しかし、日本がまだ「まじめ」ということを聞いて安心しました。確かに、塩野さんの本を読んでいてイタリアという国はマフィアの国なのだなあと感じます。やはり日本は「まじめ」な国家なのですね。

私自身は「表」の世界で精一杯生きたいと願っています。そういった思いからか、つい結局どんなに頑張っても「裏」にひっくり返されるのがオチなのかという不安を持ってしまい、変な事を聞いてしまいました。時間をさかせてしまい申し訳ありません。

これからも、刺激的なブログを楽しみにさせていただきます。

4 - Name: bold : 2006/02/05 15:20

ご参考
シシリアの名誉ある社会
http://www.nozomu.net/journal/000086.php

5 - Name: graucho0011 : 2006/02/18 23:41

グレーゾーンというとサラ金のグレーゾーン金利につながってしまい、サラ金のTV-CM解禁も電通が裏ですべてを握っており、諸悪の根源は電通というかんじがしますね。


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