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次男坊文化と長男坊文化

2001/03/18
歴史と社会

各地方ごとで経営者の属する「経営空間」がいかにちがうのか、というお話をしました。
とくに東京においてその空間はものすごく特異なことになっている、と思うのです。
私の祖父は富山県出身の次男坊です。大正時代に東京に夫婦ででてきて、最初は丁稚で修行して、まわりのかたにかわいがられ友人と電気工事屋を始めました。なんでも代官山にある当時最新鋭の「文化住宅」にすんだとかで、よく自慢をしておりました。ようするに東京にでてくる人は伝統的に「次男坊以下」なんです。
昭和10年代ごろから日本の出生率が急上昇して、いわゆる団塊の世代というのは、地方の次男、三男、四男、五男・・・が東京にでてきたのです。ようするに「優秀なる次男坊以下」が跋扈してせっせこ就職や起業に取り組んだ町、それが東京というわけです。

私はときおり米子に行くことがあるのですが、米子という町にも建材、菓子製造、CATVなどでの全国展開をめざす企業があります。
そこでは銀行も、行政も、企業家たちもみな古くからの仲間なのです。
新しい起業はですから、なかなかいろいろな業種にはいけません。
古き親友を押し倒してでて行くわけには行かないからです。
なるべく狭い領域で新領域に特化して、なんとか全国展開をする。
そういう起業のスタイルを目指します。
そしてそのスタイルは、結構外国でも通用してしまったりするのです。

一方東京にでてくる次男坊の方には、おそらく先祖代々の名を継がなきゃ!というようなプレッシャーはありません。
また古くからの事業を引き継いだが故の制約もありません。
東京にでてきて、まったくもっての新機軸で会社を興し、どちらかといえば太く短く、ずーと先の未来は考えず、「今」を最大に最速にするスタイルというのが、東京発企業(特に戦後)にはあると思うのです。

「ひかり」という名前がついた企業が今ありますが、戦後すぐにも光クラブというバブルな投資会社がありました。
東京帝大法学部の学生、山崎晃嗣が闇金融会社「光クラブ」を興したのは昭和23年9月、約3000万円の負債を抱えて服毒自殺を遂げたのは翌24年11月でした。
青白い光芒を放って消えた青年の軌跡は当時の社会に衝撃を残しました。
三島由紀夫の『青の時代』、高木彬光の『白昼の死角』、田村泰次郎の『大学の門』、北原武夫の『悪の華』は、この話を小説化したのです・・・・
まるで東京というバキュームに吸い寄せられて、急拡大をはじめ、海外進出をするが、業態が「製造業」ではないサービス業なので、なかなか海外でもうまくいかず、しかし膨張圧力は
止まない。結局、あらゆる業種に対して殺到してしまう・・・・・
東京という都市にはそういう魔力があるようにも思えるし、東京で起業する人の「次男坊気質」=一代限りにもそれは起因するようにも思えるのです。

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