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情報社会のロビンソン・クルーソー

2001/02/01
人生・本そのほか

この原稿は今後クリークアンドリバー社の広報誌に書いていく予定のものです。僕は雑誌、出版、テレビ、インターネット、新聞とまったくメディア横断的にやっていくつもりなので、自分がプロダクションシステムを持つのが難しい、と考えています。ゼロの地点から新しい産業を構成する地平を見つけていこうという点で、同社と少しく近い位置にあるのです。お互いにきびしく問われるのは志の高さという点でも・・・・

 最初に自己紹介をさせてください。
 昨年の10月に20年務めた電通を退社し「ビジネスアーキテクト」という新しい職種を始めました。現在44歳です。
 電通ではさまざまな仕事を体験しましたが、最後はメディアコンテンツ統括局調査部長、電通ドットコム取締役、電通総研研究主幹といったところです。
 電通は極めて団結力に優れたパワフルな会社で、そこに属することを心から誇りに思っていました。
 でも去年のある日、アメリカンビューティーという映画でケビン・スペイシー扮する42歳の広告マンを見たときに彼と自分の像が重なりました。ややさび付き症候群となり、次第に中年らしさ、もっともらしさをかもしだしはじめた自分とケビンが・・・・ケビン・スペイシーは結局ぶちきれて会社を辞め、ハンバーガー屋でバイトをし、70年代ロックをがんがんきいて、娘の友人の女子高校生に誘惑され・・・・最後は悲劇的な結末を迎えます。「あれはいやだ。あそこまでは切れたくない・・・でもあの若返りぶりは楽しそうだ!」
 大会社というのはある年代にさしかかると「現場ばかりじゃないだろう」というささやきが聞こえてきます。大会社を管理していくためのさまざまな仕事が増え、それに携わる人が増えてきます。僕の44歳という年も、まさにそうした立場にかわらなければならない、そうしなければ次のステップがない、という時期にさしかかっていたのです。
 「今の人脈、気力、経験をもって20歳台に戻ったら、どうなるだろう?ケビンとちがって賢くふるまい、大胆に戦略的に行動し、ケビンが迎えたような悲劇は絶対にさけよう!」そう決心してから一ヵ月半後に退社しました。
 それから思いついた「ビジネスアーキテクト」という仕事ですが、比較的うまく進みはじめています。独立後の自分を支える資産でいえば、自分の人生の最初を「営業」から始めたことが大きい。ようするに創業とか独立というのは、まず自分の「営業」からはじまるわけです。肩書きが最大のブランドだったのに、それを失ってしまい他に対して売るものがない私は、今「電通を退社した自分」を売っています。(この文章の始まりがそうですね)しかし、それももつのはせいぜいあと半年。その間になにか金脈を掘り当てて、つぎの売り物を作っていく。そしてそれが「出来る!」と信じて忙しい日々をおくっています。
 これからしばらく僕が思いついた事、考えた事、気がついたことを書いていきたいと思います。タイトルの「情報社会のロビンソン・クルーソー」は実は95年、「日本の潮流」という電通の年頭挨拶を自分が書いたときにつけたかったタイトル。しかし成田社長にご説明に行ったところ、「吉田、俺はロビンソン・クルーソーか?嫌だよ・・・ダビンチはどう?」と言われてやむなく「動詞型生活者の誕生」という小難しいタイトルに変えてしまいました。いつかはロビンソン・クルーソーでもう一度勝負したい、と思っていたのです。
 ファッションデザイナーのココ・シャネルは、自分をロビンソン・クルーソーになぞらえたことがあります。「私は無人島で自分のために服をつくるためにデザインをする」と。どこかしらクリエーターは自分を孤独の境遇においやるところがあります。そして離れた大都会を懐かしみ、想像力をかきたててクリエートをする。僕は電通が好きでしたが、クリエーションを心がける人間としては、大都会の雑踏の中でいつでも「孤独」をかみしめていた気分でした。今は本当に独りぼっちになってさみしいですが、かつていた大都会を思い出し想像力をかきたてて「ビジネスアーキテクト」という仕事を職種ごと作り出そうと試みているのです。

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