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Skymark in Flight

2004/12/26
ブランドと経営
Skymark in flight

僕が役員をやっている会社の一つにスカイマークエアラインズという航空会社があります。羽田と、福岡、鹿児島、徳島を飛んでいる新規参入のベンチャー航空会社です。
最近この会社が創業8年目にして初めての黒字決算となりました。
航空産業の自由化の際に数社が参入しましたが、生き残ったのはスカイマークだけです。
エアドゥは倒産し、産業政策銀行の再生ファンドで事実上の官営会社となりました。スカイネットアジアは最近やはり産業再生機構のファンドの支援を受けて、国有化されました。ほんとうにかろうじてぎりぎりだったのですが、スカイマークは破綻の一歩手前まで行きながら唯一生き残り、こうして黒字化を果たすことになりました。
 そもそも航空産業自体が設備投資型で多額な資金を必要とするという側面があります。一機を購入するとそのリース料から、パイロット、スチュワーデスの訓練、整備にいたるまで30億円以上の資金がかかります。そして競争相手はJALやANAなどの強力なブランド航空会社なので、当初はほとんど乗客がおりません。それに耐えて耐えて信頼とブランドを獲得し乗客を集めていく、非常に厳しい参入を迫られます。
 新しい航空産業を彼らが意図的につぶそうと考えたら簡単です。人々が航空会社を選ぶときの条件は3つです。1)価格が安い 2)便数が多い 3)なじみがある
新規航空会社が勝てるのはこのうち1)だけです。ですから、新規の航空会社が飛ぶ便だけ政策的に安い料金を大手が提示すれば、あっというまに客はだれもこなくなります。
 実際にこうした競合的な価格政策がとられ非常に厳しい競争をしいられました。そしてエアドゥが破綻するにいたり、航空行政当局はこうした競争的な価格政策を不当として行政指導により撤廃させ、また新規の発着枠(羽田)を新規の航空会社に割り当てる優遇政策をとるようになりました。要するに「競合会社の倒産がスカイマークを救った」といえましょう。

 航空産業はある意味でシンプルな産業です。何に似ているかといって「長距離バス運行会社」にそっくりです。バス=飛行機、運転手=パイロット、バスガイド=スチュワーデス、整備=整備、営業=営業という感じです。唯一つ違うのは航空会社の社員はそれぞれ専門意識があり、またプライドが非常に高いところです。(バス産業もそうかもしれませんが)しかしそれももっともで、飛行機というのはバスと違い、故障すれば墜落します。バスの場合は故障しても停車する程度ですが・・・だから全員のモチベーションが高くないと、非常に危険な事業です。安全と信頼性がなによりも重要な資源といえるでしょう。
 また航空産業は、プロバイダー産業にも似ています。
 どちらの産業も現在起こっていることは全て、2年前に決めたインフラ投資の経営決定に基づいています。ルーターと航空機。両事業においてこの設備投資が全ての原点です。
固定費が高い産業のため経営的に重要な指標は稼働率となります。そして何よりも似ているのは、NTTの回線=飛行場、NTT=JAL,ANA、総務省=国土交通省という風に見ると、既存の企業が事業独占をしており、そこにいかに風穴をあけていくか、が課題であることです。そこでは、時には激しく戦い、時には実利を選び、したたかにそして、嫌われることは仕方がないにしても、恨みは買わない要領が必要です。

 スカイマークでもう一つ楽しみなのは、航空産業とITがこれからもっと深くかかわってくると思われることです。コードシェアリングと呼ばれるのですが自前の航空機をもたなくても、たとえば海外の航空会社、ブリティッシュエアーなどと相互に乗り入れをして、共同運航を行っていくことがどんどん可能になっていきます。今まではそうしたことを可能にするIT投資力もそのノウハウも欠けていましたが、その分野の業界で最高の頭脳が結集するにいたって、新しい航空産業とITが絡んだ業態というものが生まれてくるかもしれません。

 今脚光を浴びているスカイマークですが、私はあまり急激な評価は好ましくないと考えています。情報化とともに人間の移動はますます増えています。世界的な高速の移動を担保する航空産業は、21世紀を通じて成長産業になりえると考えています。(新しい「宗教戦争」でも起こらない限りかもしれませんが・・・)ですので、是非長い目でゆっくりとスカイマークの未来に期待をお願いします。

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